目次
「宿泊」の現状
2020年12月現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、宿泊業界は危機に直面しています。
ですが、まずは「技能実習制度施行後の数年間」の参考として、
感染拡大前の数年間の宿泊業界の現状を紹介します。
日本の魅力上昇、アジア圏の所得上昇、円安などにより、日本への外国人観光客は増加し続けています。
このような状況の中、宿泊業界、特にホテル業を取り巻く現状は主に、以下の2つです。
◯ 外国人宿泊者の増加に伴うホテル不足
特に都市部においての需要があります。
もし仮に、政府が目標として掲げていた2020年の訪日外国人客数「4000万人」を達成していた場合、ホテル不足が起こっていたかもしれないほどです。
「アフターコロナ」では、多くの外国人観光客が再び日本を訪れることが期待されます。
◯ ホテルの従業員不足
ホテル不足と同じくらいに問題になっているのは、従業員が足りていないことです。
従業員不足の原因は主に2つ、
労働人口の減少、「長時間労働」「休みが少ない」などの理由で離職する人が多いことです。
ホテル不足を解消しても、そこで働く従業員がいなければ、稼働させることはできません。多くの外国人観光客を受け入れるには、ホテル不足だけでなく「従業員不足」の課題を解消する必要があります。
宿泊業で外国人を受け入れるメリット
日本の宿泊業界において外国人労働者が増えれば、前述した宿泊業界の人手不足が補えるかもしれません。
ですが、外国人労働者の受け入れのメリットはこれだけではありません。
外国人観光客への良好なコミュニケーションの担保
東京オリンピックが近づくと、日本への外国人観光客はかなり増加すると考えられています。
これに伴い、各宿泊施設では「外国人観光客への対応」が必要になるといえるでしょう。
具体的には「言語」「コミュニケーション」「国ごとの文化・習慣に合わせた対応」が必要になります。
これらに対応するには、日本人従業員が知識をつけるという方法が挙げられます。
他には、「母国における実際の文化・習慣」を受け入れた外国人労働者から学ぶことも挙げられます。
外国人観光客への適切な対応をするために、外国人労働者を受け入れてみてはどうでしょうか。
2020年の「宿泊」の現状
2020年下半期、新型コロナウイルスの影響により、宿泊業界は危機に直面しています。
東京オリンピックの延期により、今夏の特需はなくなってしまい、インバウンド市場が壊滅的になってしまいました。
国内旅行を喚起するための政策「Go Toキャンペーン」が始まるものの、新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」「第3波」の影響で制限がかかる地域が出てきています。
宿泊業の先行きは、見通しが立たない状況です。
技能実習制度とは
「技能実習制度」とは、
国際貢献のために開発途上国などの外国人を一定期間雇用し、日本の技能・知識を開発途上国へ移転する制度です。
技術移転の流れは、まず開発途上国の若者が日本での労働を通して、日本の技術・知識を修得します。その後、修得した技術を母国へ持ち帰り、母国で役立てます。
このようにして、開発途上国の発展を成し遂げ、国際貢献を目指します。
「宿泊業」であれば、日本の宿泊施設で学んだ接客作業・安全衛生作業などを母国に持ち帰ることになります。
この技能実習制度は2010年まで、「外国人研修制度」という名前で運用されてきました。しかし、本来の趣旨である国際貢献に反する運用が見られ、目的外の労働の強要・賃金の未払いなど、さまざまな問題が起きていました。
これらの問題をなくすため二制度の再検討を行い、制度の改正を行いました。この際に、制度の名称が「外国人技能実習制度」となりました。
技能実習生受け入れの流れ
ここでは、技能実習生受け入れの大まかな流れを紹介します。
まず、技能実習生を受け入れてから、事前に作成し監督省庁に提出した実習計画に沿って実習を行います。
宿泊業の場合、実習期間は最大で3年間です。
技能自習1号、2号へそれぞれの基準を満たすことで移行することができます。
受け入れを行う際の準備はかなり多いです。希望する人材の選定や必要な書類の作成・提出、法令によって定められている講習の実施などがあります。
従業員が少ない企業の方は、全ての手続きを自社で行うのが難しい場合があります。
ですが、安心してください。
全ての手続きを受入れ機関(企業)が行っているケースは少ないです。
監理団体という外部の専門機関へ委託することができ、中小企業など多くの企業が監理団体に委託して運用しています。
監理団体に委託する場合は、以下の流れで技能実習生を受け入れることになります。
◯ 監理団体に加入
◯ 現地(外国)で面談
◯ 現地で教育(講習など)
◯ 日本へ入国
◯ 監理団体での講習
◯ 受け入れ
宿泊業の技能実習2号が施行開始
宿泊業はもともと、技能実習2号の対象ではありませんでした。
そんな中、2020年2月25日に、宿泊業での技能実習2号の施行が開始されました。
これは、来日する外国人、受け入れ機関の双方にとって大きなメリットとなります。
ではいったい、技能実習2号開始でどのようなメリットがあるのでしょうか。
技能実習生の実習期間が長くなります。
技能実習1号のみだと、日本に来ても1年間しか実習ができないという状況でした。
ですが、2号の施行により、最大で3年間の実習が可能となりました。
これに伴い受け入れ機関は、新しい実習生の受け入れを急ぐ必要がなくなりました。
また、技能実習2号を修了した外国人は、無試験で特定技能1号へ移行することができます。
そのため、技能実習制度、特定技能制度の両方を活用すると、最大で8年間働いてもらうことができます。
このように、技能実習2号が施行されるだけで、外国人、受け入れ企業の双方に大きなメリットがあります。
技能実習の「宿泊」の業務内容
作業の定義
宿泊作業の定義は、
宿泊施設における、宿泊、飲食、会合などでの施設の利用客に対する、
◯ 到着時・出発時の送迎
◯ チェックイン・チェックアウト作業
◯ 滞在中の接客作業や料飲提供作業
◯ 上記3項目に伴う施設の準備・整備、利用客の安全確保、衛生管理
これら4項目のための作業であることです。
また宿泊施設とは、以下の3つの条件を満たすものを指します。
1. 旅館業法に定める旅館・ホテル営業の許可を得て、専ら客と対面して接遇を行う宿泊施設(店舗型性風俗特殊営業に関する施設は除く。)
2. 食品衛生法に基づく営業許可を得た宿泊施設
3. 消防法令適合通知書の交付を受けている宿泊施設
必須業務
第1号技能実習
(1) 利用客の送迎作業補助
1. 到着時、出発時の送迎
2. 手伝いを必要とする利用客への対応
(2) 滞在中の接客作業補助
1. 利用客への挨拶
2. 客室への注文品の配送・提供
3. 荷物の預かりと返却
(3) 会場準備・整備作業補助
1. 会場の清掃と準備
2. テーブルセッティング
3. 食器類の後片付け
(4) 料飲提供作業補助
1. 注文の受付
アレルギーの確認を含みます。
また、アレルギーの有無を上司に確認します。
2. 料理の提供
3. 飲物の提供
上記の2・3は、手の消毒も業務として含まれています。
(5) 利用客の安全確保と衛生管理補助
1. 利用客の安全確保
2. 衛生管理
第2号技能実習
(1) 利用客の送迎作業
1. 到着時、出発時の送迎
2. 手伝いを必要とする利用客への対応
(2) チェックイン・チェックアウト作業補助
1. チェックイン
2. チェックアウト
(3) 滞在中の接客作業
1. 利用客への挨拶
2. 客室への注文品の配送・提供
3. 荷物の預かりと返却
4. 館内・周辺施設の案内
(4) 会場準備・整備作業
1. 会場の清掃と準備
2. テーブルセッティング
3. 食器類の後片付け
(5) 料飲提供作業補助
1. 注文の受付
アレルギーの確認を含みます。
また、アレルギーの有無を上司に確認します。
2. 料理の提供
3. 飲物の提供
上記の2・3は、手の消毒も業務として含まれています。
4. 精算
(6) 利用客の安全確保と衛生管理
1. 利用客の安全確保
2. 衛生管理
1号と2号の違い
◯ 「1. 接客衛生管理作業」においての違い
・「(1) 利用客の送迎作業補助」から「(1) 利用客の送迎」に変わっています。補助の作業ではなくなっています。
・「(2)滞在中の接客作業補助」が「(3) 滞在中の接客作業」に変わっています。補助の作業ではなくなっています。また、「館内・周辺施設の案内」が追加されています。
・「(4) 料飲提供作業補助」が「(5) 料飲提供作業」に変わっています。補助の作業ではなくなっています。
また、作業内容に「精算」が加わっています。
安全衛生業務
安全衛生業務の内容は、1号・2号、どちらも同じ内容です。
(1) 雇入れ時などの安全衛生業務
(2) 宿泊職種に必要な整理整頓
(3) 宿泊職種の館内および敷地内の安全確認
(4) 宿泊職種における事故・疾病予防
(5) 異常時の応急措置を習得するための作業
(6) 労働衛生上の有害性を防止するための作業
関連業務、周辺業務
必須業務に関連する技能などの修得に係る業務などで、該当するものを選択します。
1. 関連業務
(1) 玄関周辺の接客作業
◯ ポーター
◯ 車の誘導
◯ ドアの開閉
(2) 客室への案内作業
(3) 客室の清掃・整備作業
2. 周辺業務
(1) 食器洗浄作業
3. 安全衛生業務
内容は、必須業務の「安全衛生業務」を同じです。
関連業務、周辺業務を行う場合は、必ず行う必要があります。
接客・衛生管理
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、宿泊業界は大きな打撃を受けています。
ですが、だからと言って経営を止めるわけにはいきません。
感染防止の対策を徹底しながら営業していくことが求められており、事業の継続につながります。
そこで、多くの宿泊施設にて行われている衛生管理を、ここで紹介します。
宿泊事業者が徹底すること
1. 宿泊者全員に対し、宿泊者名簿への正確な記載を働きかける。
2. 保健所が行う疫学調査などの、宿泊者に関する状況把握に協力する。
3. 宿泊者に対し、新型コロナウイルスに関する情報提供(手洗い、咳エチケット等の対策など)を行う。
4. 宿泊者が、発熱かつ咳などの呼吸器症状を発症した場合、必ず宿泊施設側に申し出るようお願いする。
5. 宿泊者が、宿泊施設滞在中に上記の症状の発症を申し出た場合、事前に医療機関へ連絡してから受診するよう勧める。医療機関での診察を希望した宿泊者に対しては、医療機関の紹介等の支援を行う。
6. 宿泊施設の従業員に対しては、咳エチケットや手洗いなど、通常の感染対策を推奨する。特に、発症の申し出があった当該宿泊者と対応した従業員は、マスクの着用、症状が認められた際の医療機関での受診など、適切な対応をとる。
7. アルコール消毒液の設置をはじめとした利用者に係る感染症対策を行う。
8. WHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に滞在していたことのみを理由として宿泊を拒否することはできない。
感染が疑われる宿泊者が発生した場合の対応
1. 宿泊者から、発熱など体調に異変が生じている、または、
「WHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域から帰国・入国した」
「これらの者と接触した」
という旨の申し出があった場合は、宿泊者の同意を得た上で、速やかに最寄りの保健所(帰国者・接触者相談センター)へ連絡し、その指示に従いましょう。
2. 感染が疑われる宿泊者に対し、以下の依頼をしましょう。
◯ 感染拡大の予防の必要性に関する説明を十分に受け、レストラン等の利用を控え、他の宿泊者と接触しないよう個室での待機をする。
◯ 同室者がいれば他室への移動と待機をする。
◯ 飛沫の飛散を防止するため、感染が疑われる宿泊者および同室していた者は、マスク着用をする。
3. 感染が疑われる宿泊者に対応する従業員の数を極力制限し、原則として、部門長などの責任者が対応しましょう。感染が疑われる宿泊者に接触する場合は、マスクおよび使い捨て手袋を着用し、感染が疑われる宿泊者から離れた場合は、手洗い・うがいを確実に行いましょう。使用後のマスクおよび手袋はビニール袋で密閉し、焼却する等適正な方法で廃棄しましょう。
4. 保健所から求めがあった場合は、保健所が行う、宿泊者名簿による当該宿泊者の宿泊期間中における接触者の状況等の調査に協力しましょう。
5. 施設の消毒は、保健所の指示に従って実施することが望ましいですが、緊急を要し、自ら行う場合には、感染が疑われる宿泊者が利用した区域(客室、レストラン、エレベータ、廊下等)のうち手指が頻回に接触する箇所(ドアノブ、スイッチ類、手すり、洗面、便座、流水レバー等)を中心に行いましょう。また、シーツ等のリネン類の洗濯に当たっては、医療リネンに準じて扱いましょう。
まとめ
今回は、技能実習「宿泊」について紹介しました。
外国人労働者の受け入れ、感染対策の参考になりましたら幸いです。
感染対策等については、最新の情報もあわせてご参照ください。
困ったときは専門家に相談しましょう
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- 執筆者
- 外国人労働者ドットコム編集部
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