技能実習制度

この記事では、2022年から新たに技能実習の職種に追加された「鉄道車両整備」について解説しています。
「鉄道車両整備」の分野で働かれているあなたが技能実習生を受け入れる場合、知っておくべきことをこの記事で確認できます。

そもそも技能実習制度と何なのか、受け入れ方法・流れ、実習生に任せる業務内容などをこの記事で確認できますので、ぜひお読みください。

技能実習制度に「鉄道車両整備」の職種が追加

2022年4月25日から、技能実習制度の職種に「鉄道車両整備」が追加されました。
作業内容は以下の2つです。

・「走行装置検修・解ぎ装作業」
・「空気装置検修・解ぎ装作業」

ということでこの記事では、
「鉄道車両整備の現場に、外国人技能実習生を受け入れたい!」と思っているあなたに必要な情報を解説していきます。

「外国人技能実習制度」とは?

まずは、「外国人技能実習制度(以下: 技能実習制度)」について知っていきましょう。

外国人技能実習制度とは、開発途上国の「人づくり」をすることにより、国際貢献をすることが目的です。
日本の仕事現場へ、開発途上国の外国人を「実習生」として受け入れ、日本の仕事現場における技術・知識・専門性を実習生の母国へと移転します。

近年では、外国人労働者を受け入れるための制度として知られていることもありますが、実は全く違います。
技能実習方では、以下の2つの基本理念が掲げられています。

1. 技能等の適正な修得、習熟または熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと
2. 労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと

技能実習制度を利用するためにはまず、制度の趣旨を理解することが大切です。そして理解を深めることが、あなたが今後「技能実習制度を安全に、適切に利用できること」につながりますので、しっかりと理解しておきましょう。

技能実習生を受け入れるには?

技能実習生を受け入れる方式は、以下の2つです。
① 企業単独型
日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式

② 団体監理型
事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式

2021年末時点では、98.6%の企業が②団体監理型で技能実習生を受け入れています。

あなたの企業が技能実習生を受け入れるには、
技能実習生ひとりひとりに向けた技能実習計画の作成、技能実習機構からの認定などの必要な準備があります。また、技能実習生の待遇や受け入れられる人数などの基準に適合すること、労働法令、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法の順守も必須です。

受け入れまでの流れ

団体監理型で受け入れる場合は、以下のような流れとなります。
① 監理団体に技能実習生の人数等を申込む
② 送出機関による応募・選考を経て技能実習生と雇用契約
③ 外国人技能実習機構に「技能実習計画」を認定してもらうための申請
④ 実習計画認定後、出入国在留管理庁に在留資格の申請

監理団体とは

監理団体とは、技能実習の適正な実施、技能実習生の保護についてサポートする企業のことです。
サポートの内容は主に以下の3つです。

1. 送出機関との連絡や技能実習計画作成の支援。
2. 認定された技能実習計画に従って適切に技能実習を行わせていることの確認。また、法令に違反していないかどうかを3ヶ月に一回、企業の定期監査として実施。
3. 技能実習生からの相談に応じる。

受け入れるための環境づくり

あなたの企業が技能実習生を受け入れる場合、受け入れるための環境を作る必要があります。
そのうちの一つとして、以下の3種類の責任者を決めることがあげられます。

① 技能実習責任者

技能実習指導員や、生活指導員など、技能実習にかかわる職員のリーダーとして、技能実習を安全かつ適切に進めるための指定講習を受けた責任者です。

② 技能実習指導員

技能実習生に仕事を教え、技術や知識を学ぶための手助けをします。
この役割は、実習内容の作業に詳しい熟練者が担当します。

③ 生活指導員

言葉や価値観が日本とは異なる技能実習生に、生活方法や日本の習慣などを教えて、技能実習生の日本での暮らしを支える指導員です。
技能実習生は、現場の実習だけでなく、日本での長期滞在にも慣れていません。そのため、このような役割が必要とされています。

技能実習計画について

まず技能実習計画とは、技能実習を適正に行うべく、技能実習生の受入れ企業が作成する技能実習の計画のことをいいます。

団体監理型で受入れを行う企業は監理団体の指導に基づき、技能実習計画を作成する必要があります。
計画作成後、外国人技能実習機構が認定するかどうかを決めます。
技能実習生ひとりひとりに、第1号、第2号、第3号のそれぞれの区分に応じた技能実習計画を作成し、認定を受ける必要があります。特に技能実習3号の実習計画については、実習実施者となる受入れ企業と監理団体が「優良認定」を受けている必要があります。

鉄道車両整備『走行装置検修・解ぎ装』の業務内容

第1号技能実習

必須業務

(1) 走行装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 基本的な工具類の取り扱い(スパナ・レンチ・ペンチ・ニッパ・プライヤ・ハンマ・ドライバ)
2. 指示された工具類の選択、配置

② 材料の選択、配置作業
1. 指示された材料の選択、配置

③ 機器検修・解ぎ装作業の補助
1. 走行装置の分解の補助
2. 走行装置の組み立ての補助

④ 作業後の環境整備作業
1. 指示された環境整備

第2号技能実習

必須業務

(1) 走行装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 工具類の取り扱い
2. 作業に必要な工具類の選択、配置

② 材料の選択、配置作業
1. 作業に必要な材料の選択、配置

③ 機器検修・解ぎ装作業
1. 走行装置の車体からの取り外し
2. 走行装置の分解
3. 走行装置の検査修繕
4. 走行装置の組み立て
5. 走行装置の車体への取り付け

④ 作業後の環境整備作業
1. 自主的な環境整備

第3号技能実習

必須業務

(1) 走行装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 工具類の取り扱い
2. 作業に必要な工具類の選択、配置
3. 工具類の状態確認、良否判定

② 材料の選択、配置作業
1. 作業に必要な材料の選択、配置
2. 材料の状態確認、良否判定

③ 機器検修・解ぎ装作業
1. 走行装置の車体からの取り外し、取り付け部や非解装部位の状態判断
2. 走行装置の分解、部品の状態判断
3. 走行装置の検査修繕
4. 走行装置の組み立て
5. 走行装置の組み立て後の後検査
6. 走行装置の車体への取り付け
7. 走行装置の車体への取り付け後の後検査、調整

④ 作業後の環境整備作業
1. 自主的な環境整備
2. 環境整備状態の確認

安全衛生業務

安全衛生業務の内容は、第1〜3号すべて共通しています。

① 雇い入れ時等の安全衛生教育
② 作業開始前の検修設備・工具類の点検作業
③ 機器検修・解ぎ装に必要な整理整頓作業
④ 機器検修・解ぎ装に関する周囲の安全確認作業
⑤ 保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥ 安全装置の使用等による安全作業
⑦ 労働安全衛生上の有害性を防止するための作業
⑧ 異常時の応急措置を修得するための教育

関連業務

安全衛生業務の内容は、第1〜3号すべて共通しています。

① 車体検修作業
② 走行装置以外の装置の解ぎ装作業
③ 走行装置に付属する装置の機器検修作業
④ 車両改造作業
⑤ 点検調整作業
⑥ 玉掛作業 (つり上げ荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑦ クレーン作業 (つり上げ荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑧ フォークリフト運転作業 (最大荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑨ 板金・溶接作業 (作業に応じて特別教育、技能講習が必要)

(2) 周辺業務
① 作業用機材・部品等の搬送作業(作業場内)
② 部品等の梱包・出荷作業
③ 検査結果・修繕内容等の記録作業
④ 作業場の整理・整頓・清掃作業
⑤ 高所作業車の運転に係る作業 (作業床の高さに応じた特別教育、技能講習が必要)

(3) 安全衛生業務(関連業務、周辺業務を行う場合は必ず実施する業務)
必須業務と同様の内容です。

鉄道車両整備『空気装置検修・解ぎ装』の業務内容

第1号技能実習

必須業務

(1) 空気装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 基本的な工具類の取り扱い(スパナ・レンチ・ペンチ・ニッパ・プライヤ・ハンマ・ドライバ)
2. 指示された工具類の選択、配置

② 材料の選択、配置作業
1. 指示された材料の選択、配置

③ 機器検修・解ぎ装作業の補助
1. 空気装置の分解の補助
2. 空気装置の組み立ての補助

④ 作業後の環境整備作業
1. 指示された環境整備

第2号技能実習

必須業務

(1) 空気装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 工具類の取り扱い
2. 作業に必要な工具類の選択、配置

② 材料の選択、配置作業
1. 作業に必要な材料の選択、配置

③ 機器検修・解ぎ装作業
1. 空気装置の車体からの取り外し
2. 空気装置の分解
3. 空気装置の検査修繕
4. 空気装置の組み立て
5. 空気装置の車体への取り付け

④ 作業後の環境整備作業
1. 自主的な環境整備

第3号技能実習

必須業務

(1) 空気装置検修・解ぎ装
① 工具類の取り扱い、選択、配置作業
1. 工具類の取り扱い
2. 作業に必要な工具類の選択、配置
3. 工具類の状態確認、良否判定

② 材料の選択、配置作業
1. 作業に必要な材料の選択、配置
2. 材料の状態確認、良否判定

③ 機器検修・解ぎ装作業
1. 空気装置の車体からの取り外し、取り付け部や非解装部位の状態判断
2. 空気装置の分解、部品の状態判断
3. 空気装置の検査修繕
4. 空気装置の組み立て
5. 空気装置の組み立て後の後検査
6. 空気装置の車体への取り付け
7. 空気装置の車体への取り付け後の後検査、調整

④ 作業後の環境整備作業
1. 自主的な環境整備
2. 環境整備状態の確認

安全衛生業務

安全衛生業務の内容は、第1〜3号すべて共通しています。

① 雇い入れ時等の安全衛生教育
② 作業開始前の検修設備・工具類の点検作業
③ 機器検修・解ぎ装に必要な整理整頓作業
④ 機器検修・解ぎ装に関する周囲の安全確認作業
⑤ 保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥ 安全装置の使用等による安全作業
⑦ 労働安全衛生上の有害性を防止するための作業
⑧ 異常時の応急措置を修得するための教育

関連業務

① 車体検修作業
② 空気装置以外の装置の解ぎ装作業
③ 圧力空気を使用する装置の機器検修作業
④ 車両改造作業 ⑤ 点検調整作業
⑥ 玉掛作業(つり上げ荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑦ クレーン作業(つり上げ荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑧ フォークリフト運転作業(最大荷重に応じた特別教育、技能講習が必要)
⑨ 板金・溶接作業(作業に応じて特別教育、技能講習が必要)

(2) 周辺業務
① 作業用機材・部品等の搬送作業(作業場内)
② 部品等の梱包・出荷作業
③ 検査結果・修繕内容等の記録作業
④ 作業場の整理・整頓・清掃作業
⑤ 高所作業車の運転に係る作業(作業床の高さに応じた特別教育、技能講習が必要)

(3) 安全衛生業務(関連業務、周辺業務を行う場合は必ず実施する業務)
必須業務と同様の内容です。

技能実習計画作成時の注意点

 

技能実習計画を作成する際は、以下の3点について注意する必要があります。

1. 業務内容の割合

必須業務が2分の1以上、関連業務が2分の1以下、周辺業務が3分の1以下であるとともに、必須業務等の各々について、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生に係る業務に充てる必要があります。また移行対象職種・作業でない場合であっても、従事させる業務に関する安全衛生に係る業務を行わせる必要があります。

2. 技能実習計画審査基準, モデルを参照すること

技能実習計画審査基準や技能実習実施計画書モデル例等を参照し、技能実習に従事させる業務の具体的内容を検討の上、技能実習実施計画における実習実施予定表に必須業務等の各々の作業を設定する必要があります。

3. 十分に実習を行うための環境を確保すること

技能実習計画は、技能実習を行わせる事業所において通常行われている業務であり、技能実習を行わせる事業所において一般的に用いられている機械、器具、素材、材料等を用いた内容にします。また、受け入れる技能実習生の人数に応じた業務量を確保する必要があります。

まとめ

今回は、技能実習制度と「鉄道車両整備」について解説しました。
技能実習制度は労働者を受け入れるための制度ではありません。
あなたの企業が法令違反をすることなく適正に運用するには、運用方法だけだはなく、まずは制度の趣旨から理解することが必要です。
また、受け入れるための環境づくりをする必要もあります。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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