技能実習制度

2023年の3月末より技能実習の対象職種に「ボイラーメンテナンス職種」が追加されました。
しかし、この記事が作成されている2023年7月時点では、技能実習生の受け入れができる企業が1社しかない、また受け入れ方法が1つしかないなど、まだまだ制限がかかっている部分があります。

そこで今回この記事では、日本のボイラーメンテナンス業務にて技能実習生の受け入れを考えているあなたへ向けて、
技能実習「ボイラーメンテナンス職種」の現状、技能実習制度のそもそもの趣旨、現在はどのような業務が実習内で行われているのかを解説していきます。

まだ始まったばかりの技能実習対象職種ですが、今後あなたが運用することになったときのために読んでおきましょう。

技能実習に「ボイラーメンテナンス」が追加

2023年3月31日より、技能実習制度の職種に「ボイラーメンテナンス」が追加されました。
ボイラーメンテナンスの技能実習は特定の企業が単独で行います。
そのため2023年7月時点では、監理団体を介することなく、技能実習生を受け入れることとなっています。

技能実習とは


技能実習の正式名称は『外国人技能実習制度』であり、この制度は実習への参加を希望する外国人を受け入れる働きをしています。

『外国人技能実習制度』の目的・趣旨は、海外の開発途上地域、発展途上の地域の経済発展です。日本の職場・現場で活用されている技能を、海外の開発途上地域、まだ技術があまり広まっていない地域へ移転し、現地の経済発展を目指します。
技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本の企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、母国では修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。ボイラーメンテナンス職種の場合、実習期間は最長3年(2023年7月現在)であり、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。

この記事で取り上げている「ボイラーメンテナンス職種」の場合は、ボイラーの定期点検確認、定期補修整備、突発修理整備の技能を実習生が修得し、母国に移転していただきます。

また、海外の地域の発展、国際貢献が目的であり、日本の企業の人材不足を補うための手段ではありません。
技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。
技能実習制度を使う場合には、このことをよく理解しておく必要があります。

【受け入れ方法】 企業単独型とは?

技能実習「ボイラーメンテナンス職種」では、技能実習生を受け入れるにあたって「企業単独型」という方式をとっています。
これだけでは受け入れ方式について理解できないかと思いますので、技能実習制度の、そもそもの受け入れ方式から確認していきましょう。

技能実習制度の受け入れ方式には、以下の2つがあります。
大きな違いは、第3者機関である監理団体を仲介しているかどうかです。
企業単独型は監理団体を仲介せず、技能実習生を直接受け入れます。これに対して団体監理型は、監理団体を仲介して技能実習生を受け入れます。

① 企業単独型
日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式

② 団体監理型
事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式

外国人技能実習制度を利用する多くの企業は、②の団体監理型で実習生を受け入れています。
ですが「ボイラーメンテナンス職種」では①の企業単独型のみが採用されています。
というのも、2023年7月の時点では、ボイラーメンテナンス職種における実習生の受け入れができる企業は、「三浦工業株式会社」だけなのです。
三浦工業株式会社が、実習生受け入れに必要な試験(技能実習評価試験)を自社で用意することによってのみ受け入れが可能となっているため、他のボイラー関連の企業が監理団体(受け入れ時の仲介機関)を活用して受け入れるという選択肢はまだありません。

このように2023年7月時点では、ボイラーメンテナンス職種での技能実習生の受け入れは、企業単独型によってのみ行われています。

業務内容の審査基準

技能実習生が従事する業務内容には、審査基準があります。この審査基準は厚生労働省が発表しており、業務内容に関する細かな要件が書かれています。

業務内容は以下の4つに大きく分けられており、これらを技能実習の業務内容に含める必要があります。

(1) 必須業務
(2) 関連業務
(3) 周辺業務
(4) 安全衛生業務

技能実習責任者、指導員はこの審査基準の内容を確認し、基準を満たしている業務内容を、技能実習生たちに従事させる必要があります。

では、審査基準を見ていきましょう。

【1】 必須業務

当該職種・作業で必ず従事しなければならない業務です。ここに記載された業務は、「必要に応じて行う」などのただし書きがない限りは必ず行います。また第1号技能実習から第2号への移行に伴い、修得すべき技能要素は高度化していきます。
ボイラーメンテナンスの場合は、第2号技能実習への移行に伴い、ボイラー突発修理整備作業が、必須業務に追加されています。

必須業務の割合は全体の2分の1以上とし、職種・作業ごとに別紙に掲げるすべての必須業務を技能実習計画に盛り込むこととされています。

ボイラーメンテナンス作業の必須業務は大きく分けて以下の2つに分けられています。
(1) ボイラーメンテナンス作業
(2) 安全衛生業務

『(2)安全衛生業務』は第1号、第2号、どちらも同じ内容です。

技能実習1号の場合

(1) ボイラーメンテナンス作業
1号の場合、ボイラーメンテナンス作業の内容は、
①点検確認作業、②補修整備作業の2つに大きく分けられています。

① ボイラー定期点検確認作業
1. ボイラー本体の点検・確認

2. 燃焼装置の点検・確認
・油加熱器及び燃料送給装置
・バーナ
・ストレーナ
・バーナタイルおよび炉壁
・煙道

3. 自動制御装置の点検・確認
・起動および停止の装置
・火炎検出装置
・燃料遮断装置
・水位調節装置並びに圧力調節装置
・電気配線

4. 附属装置および附属品(ボイラー内のもの、軟水装置および薬注措置に限る)の点
・給水装置
・蒸気管およびこれに附属する弁
・空気予熱器
・水処理装置
・その他附属品

5. 安全装置の作動確認
・安全弁
・水管過熱サーモ
・排ガス温度サーモ
・感震器

6. 正常運転確認

7. 点検、整備結果の記録

② ボイラー定期補修整備作業
1. ボイラー本体の補修

2. 燃焼装置の補修
・油加熱器および燃料送給装置
・バーナ
・ストレーナ
・バーナタイルおよび炉壁
・煙道

3. 自動制御装置の補修
・起動および停止の装置
・火炎検出装置
・燃料遮断装置
・水位調節装置並びに圧力調節装置
・電気配線

4. 附属装置および附属品(ボイラー内のものに限る)の補修
・給水装置
・蒸気管およびこれに附属する弁
・空気予熱器
・水処理装置
・その他附属品

5. 安全装置の補修
・安全弁
・水管過熱サーモ
・排ガス温度サーモ
・感震器

6. 正常運転確認

7. 点検、整備結果の記録

(2) 安全衛生業務
① 雇入れ時等の安全衛生教育
② 作業開始前の安全確認作業
③ 整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守
④ 作業者間の安全確認作業
⑤ 保護具着装および安全標識・装置等の確認作業
⑥ ボイラーメンテナンス職種における事故・疫病予防
⑦ 労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧ 異常時の応急措置を修得するための作業

技能実習2号の場合

(1) ボイラーメンテナンス作業
2号の場合、作業内容は大きく分けて3つに分けられています。
1号でもあった作業内容① 点検確認作業、② 補修整備作業の2つに、③ 突発修理整備作業が追加されています。

① ボイラー定期点検確認作業
1. ボイラー本体の点検・確認
2.燃焼装置の点検・確認
・油加熱器及び燃料送給装置
・バーナ
・ストレーナ
・バーナタイルおよび炉壁
・煙道

3. 自動制御装置の点検・確認
・起動および停止の装置
・火炎検出装置
・燃料遮断装置
・水位調節装置並びに圧力調節装置
・電気配線

4. 附属装置および附属品(ボイラー内のもの、軟水装置、薬注装置に限る)の点検
・給水装置
・蒸気管およびこれに附属する弁
・空気予熱器
・水処理装置
・その他附属品

5. 安全装置の作動確認
・安全弁
・水管過熱サーモ
・排ガス温度サーモ
・感震器

6. 正常運転確認

7. 点検、整備結果の記録

② ボイラー定期補修整備作業
1. ボイラー本体の補修
2. 燃焼装置の補修
・油加熱器および燃料送給装置
・バーナ
・ストレーナ
・バーナタイルおよび炉壁
・煙道

3. 自動制御装置の補修
・起動および停止の装置
・火炎検出装置
・燃料遮断装置
・水位調節装置並びに圧力調節装置
・電気配線

4. 附属装置および附属品(ボイラー内のものに限る)の補修
・給水装置
・蒸気管およびこれに附属する弁
・空気予熱器
・水処理装置
・その他附属品

5. 安全装置の補修
・安全弁
・水管過熱サーモ
・排ガス温度サーモ
・感震器

6. 正常運転確認

7. 点検、整備結果の記録

③ ボイラー突発修理整備作業
1. 運転状態の確認
2. 記録やデータからの症状診断
3. データ解析等による不具合箇所の特定
4. 部品交換・補修
5. 正常運転確認

(2) 安全衛生業務(※ 1号と同じ内容です。)
① 雇入れ時等の安全衛生教育
② 作業開始前の安全確認作業
③ 整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守
④ 作業者間の安全確認作業
⑤ 保護具着装および安全標識・装置等の確認作業
⑥ ボイラーメンテナンス職種における事故・疫病予防
⑦ 労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧ 異常時の応急措置を修得するための作業

関連業務、周辺業務

(1) 関連業務
1. 労働安全衛生関係法令に基づき、ボイラー整備士資格が必要なボイラーの整備および必須業務の各作業についての補助作業です。

ボイラー整備士資格が必要なボイラーは以下のとおりです。
① 胴の内径が750mm超え、または、その長さが1300mm超えの蒸気ボイラー
② 伝熱面積が3平方メートル超えの蒸気ボイラー
③ 伝熱面積が14平方メートル超えの温水ボイラー
④ 伝熱面積が30平方メートル超えの貫流ボイラー(気水分離器を有するものについては、当該気水分離器の内径が400mm超えで、または、その内容積が0.4立方メートル超えのもの。)

2. 圧力容器点検整備作業
3. 証票作成作業(点検結果報告書、効率計算報告書等)
4. 機器更新作業(ボイラー及び附帯装置入替工事)
5. ベアリング交換作業
6. 酸洗浄作業
7. 煤洗浄作業
8. 薬注器用薬品補充作業
9. 軟水装置用再生塩補充作業
10. 水質分析用水サンプリング作業
11. データ解析(オンライン通信)
12. 燃料油処理作業
13. 給水前処理作業

(2) 周辺業務
1. 清掃作業
2. 部品倉庫仕分作業

(3) 安全衛生業務(関連作業、周辺作業を行う場合は必ず実施する作業です)
① 雇入れ時等の安全衛生教育
② 作業開始前の安全確認作業
③ 整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守
④ 作業者間の安全確認作業
⑤ 保護具着装および安全標識・装置等の確認作業
⑥ ボイラーメンテナンス職種における事故・疫病予防
⑦ 労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧ 異常時の応急措置を修得するための作業

使用する素材(材料)

ボイラー整備に関する校正部品(定期交換部品、保安部品、消耗部品、外装部品およびその他構成部品)について、以下の中から該当するものを選択します。

ノズルチップ、着火ガイシ、電極保持器、点火コード、点火トランス、ゲージガラス、安全弁、電磁弁、バルブ、ストレーナ、圧力計、圧力スイッチ、フィルタ

使用する機械、器具等

① 機械、設備(附属品を含む)等
以下から、該当するものを選択します。

1. 燃焼測定機器一式
2. データ収集機器一式
3. エアコンプレッサ
4. パイプマシン
5. 酸洗浄装置一式
6. 煤洗浄装置一式

② 器工具等
1. ドライバー各種
2.. スパナ各種
3. メガネレンチ各種
4. プライヤー各種
5. ハンマー各種
6. 六角レンチ各種
7. カッター
8. トルクレンチ
9. スケール各種
10. 圧力計
11. パイプレンチ

移行対象職種・作業とはならない作業例

以下の2業務は技能実習制度の作業内容にはなりませんので、ご注意ください。
1. ボイラー製造工程作業
2. ボイラー運搬作業

まとめ

今回は、技能実習「ボイラーメンテナンス職種」について解説しました。
まだボイラーメンテナンスの技能実習はまだ始まったばかりということもあり、制限されている部分が多いです。
今後、他のボイラーメンテナンス関連の企業も受け入れが可能になる可能性もありますので、今回の記事を参考にし、技能実習制度への理解を深めておきましょう。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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