技能実習制度

「外国人技能実習制度」とは母国では身に付けることができない技能や知識を、日本で学び母国で役立てようとする国際貢献を目的とした制度です。
企業の業務改善や労働力の確保などに繋がりますが、実習生の失踪など様々なデメリットも生じているのが実情です。
また実習生に対しての最低賃金の上昇についても議論されています。

外国人の技能実習制度とは?外国人を雇いたい企業向けに解説

外国人の技能実習制度がどのようなものか知りたいと思っている方も多いのではないでしょうか。簡単に説明すると「外国人技能実習制度」とは、外国人が日本で技術や知識を学び自国で経済発展へと繋げるのが目的の制度です。

外国人を雇う際の技能実習制度とは?

技能実習制度はあくまでも国際貢献が主であり、実習生を労働者として使い、労働力の補充として使うものではありません。
従って技能実習制度の滞在期間は長くても5年までと決められています。

2016年11月28日に公布された法律では、労働力の補完として実習生を扱ってはいけないこと、また、受け入れた企業は実習生が技能習得に専念できるような環境を整えなければならないことが定められています。

外国人実習制度は労働力として外国人を扱うのではなく、開発途上の国の人が技術や知識を学びに来た「人」として扱わなければいけないということです。

技能実習生を受け入れる2種類の方法

外国人の技能実習生を受け入れるには方法には「団体監理型」と「企業単独型」の2種類の方式があります。
2種類の受入方式について説明していきます。

団体監理型

営利目的ではない事業協同組合や公益社団法人、職業訓練法人などが技能実習生を受け入れて、傘下となっている企業等が実習実施者となり技能実習を行います。

団体監理型から受け入れを希望する場合、事業協同組合や商工会等などに入会をしないといけません。
団体管理の入会は入会費が1万~10万円。年会費が2万から~10万円が一般的です。

実習の受け入れ方式は公益財団法人、国際研修協力機構JITCO(https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/)のホームページによると2018年度末、97.2%が団体監理型です。また団体監理型で実習生を受け入れている企業の65%が零細企業となっています。

企業単独型

企業単独型は主に海外に現地法人をもっている日本企業や合弁企業、取引先企業の常勤職員を受け入れて技能実習を行うというものです。
また受け入れから全ての事務作業を企業単独で行います。

公益財団法人、国際研修協力機構JITCOによると企業が単独で技術者を受け入れる企業単独型を行うには、3つの要件が必要だと明記しています。

  1. 日本の公私の機関の外国にある支店、子会社、合弁会社など。
  2. 日本の公私の機関と引き続き1年以上の国際取引の実績又は過去1年間に10億円以上の
    国際取引の実績を有するもの。
  3. 日本の公私の機関と国際的な業務上の提携を行っている等の密接な関係を有する機関として
    法務大臣及び厚生労働省大臣がも認めるもの。

2018年末、企業単独型を採用しているのは全体の2.8%で、前述した団体監理型と比較をすると非常に少ないことが分かります。

 

技能実習制度のメリットとは?

次に技能実習制度にはどのようなメリットがあるかを紹介していきます。

若い人材確保

技能実習生の多くは若くやる気に満ちています。
日本で高い技術や知識を身につけたいと思う若者たちの気持ちは、きっと他の社員たちにも良い影響を与えるでしょう。

技能実習生の受け入れは毎年行われるため、技能実習生を継続的に受け入れていることで、
実習生同士で助け合いの関係が生まれるようになります。

外国人の先輩後輩の関係性から、仕事上や普段の生活で起こったトラブルの解決や困ったときに助け合うことができる関係性の構築が可能です。

また外国人技能実習生を継続的に迎え入れているということで、会社の評判が高くなり結果として日本人の就労希望者が増えたという事例もあります。

業務改善

日本において外国人労働者を受け入れる体制作りは急務といってよいでしょう。
なぜなら日本の労働人口は減少し、外国人労働者が必要になることは誰の目から見ても明らかだからです。
そのためには、外国人労働者が少しでも働きやすい、社内のルールの改善や作業手順、マニュアルの見直しをする必要があります。
また従来通りのやり方を見直すことで現状の業務の改善に繋がる可能性もあるでしょう。

企業の国際化による海外進出

技能実習制度を活用して外国人を受け入れるということは、異国の文化と向き合うということです。
外国人実習生を受け入れることで、仮に企業が海外進出した際に帰国した実習生の情報が役に立つというのあります。
また、実習生が帰国し実習生が就職した企業との間にパイプが形成される可能性もあるからです。
異文化コミュニケーションを積極的にとることで海外へ進出するという思考が生まれ、きっかけの一つになるでしょう。

 

技能実習制度の問題点とは?

次に技能実習制度の問題点を3点取り上げていきます。

厳しい管理制度

現在の改正法に変わるまで、日本の技能実習制度は討議議事録(R/D:Record of Discussions)を取り交わした国が送り出しが可能でした。
しかし実情は政府の認可を受けていない国からも、実習生の送り出しが実行されていました。
さらに悪いことに実習生から保証金や違約金を取ろうとする業者まで現れている状態でしたた。
2017年11月の改正法によって、最初の実習期間の1/6を合同研修の期間として義務付けました。送り出した国内で全体の1/12の研修を受けた場合、日本での事前講習は半分になります。

さらに講習手当や渡航費なども受け入れた団体が請け負うことになりました。

技能実習生の事件数・失踪問題

日本で実習期間中に失踪した外国人実習者について、入国管理局(http://www.mlit.go.jp/common/001273509.pdf)、平成29年度の失踪者数総計7,089人であると発表しました。
またニュースでも実習生に対し賃金を払っていなかったことや、最低賃金以下で働かせているという事実が後を絶ちません。

さらに暴行や脅迫、監禁などの被害を受けていたという事実もありました。受け入れた企業側が弱い立場の実習者を労働者として扱い、虐げてきたことが明るみに出ました。

低賃金と長時間労働

度々ニュースとして報じられるのが技能実習生に対しての低賃金と長時間労働の問題です。
当然、技能実習生に対して日本の労働関係法が適用されなければなりません。
しかし受け入れる企業の中には技能実習生を不当な低賃金で働かせたり、午前8時30分から深夜3時まで働いて、手取りが8万円だけだったりするなどの実例があります。(https://hbol.jp/179345)

また勤務記録の改ざんなども行われるなど、悪質なケースも発覚しているようです。

 

技能実習制度と職種

外国人技能実習制度は1号から3号まで設けられています。
また「技能実習制度における移行対象職種・作業の追加等に係る事務取扱要領」により、受け入れ可能な対象職種が定められています。ここではその一例をご紹介いたします。

建設

建設の分野は22職種33作業に分類されています。
建設関連は募集している業種の中でも最も職種と作業が多い業種です。
建設関連の職種は、「左官」「とび」「さく井」「タイル張り」「かわらぶき」「塗装」「建築板金」「冷凍空気調和機器施工」「ウェルポイント施工」「建具製作」「建築大工」「型枠施工」「鉄筋施工」「コンクリート圧送施工」「石材施工」「配管」「熱絶縁施工」
「内装仕上げ施工」「サッシ施工」「防水施工」「表装」「建設機械施工」「築炉」となっています。
また例えば石材施工には石材加工と石張り作業の2つに分かれます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催や大阪万博の開催など国際的なイベントが開催されるため、人手が足りていない建設現場に実習生を配置したいという考えなのでしょう。
原則として外国人実習生は職種以外の作業を行うことは禁じられています。

食品製造

食品製造において気をつけないといけないのは、食中毒の防止や労働災害の防止です。
厚生労働省は食中毒の発生や労働災害が起こらないよに、作業手順の構築や報告の重要性を受け入れ起業に説明しています。

食品製造の職種は、11職種16作業に分類です。「そう菜製造業」「パン製造」「水産練り製品製造」「ハム・ソーセージ・ベーコン製造」「缶詰巻締」「食鳥処理加工業」「加熱性水産加工食品製造業」「牛豚食肉処理加工業」「医療・福祉施設給食製造」「非加熱性水産加工食品製造業」「農産物漬物製造業」に大別されます。

介護

平成29年11月1日に制定された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」によって新しく実習制度の対象となったのが介護の分野です。
今のところ介護はその他の14種類226作業の中の一つという扱いになっています。

日本の少子高齢化のスピードは先進諸国で最も早いと危惧されています。しかし日本の介護分野は世界的にトップクラスということもあり、多くの国々から介護技術を取り入れようという動きが活発です。
その結果、技能実習生が取り組むべきテーマとして、技能実習制度に採用されました。

介護については固有要件を定め、介護サービスの特性に基づく様々な懸念を払しょくするよう対応することが求められています。

農業

日本の農家の人手不足は非常に顕著ですが、優れた日本の農業技術を学ぼうとする技能実習生は年々増加していると農林水産省は発表しています。

農業の分野は2職種6作業となっています。
職種は「耕種農業」、「畜産農業」の2種です。耕種農業は「果樹」「畑作・野菜」「施設園芸」の作業に分類され、畜産農業は「酪農」、「養鶏」、「養豚」の3つが作業となります。

 

技能実習制度における外国人の賃金は?

外国人の実習生の賃金は未払いや最低賃金以下で働かせていることが判明し、大きくバッシングを受けた企業もあります。
では外国人実習生に対してどのくらいの賃金を支払えばよいのでしょうか。

法律の改正によって日本の労働基準法が適用されるようになった

平成22年の改正されたた「出入国管理及び難民認定法 (入管法 )」によって、外国人技能実習生は入国1年目から日本の労働基準法が適用され、労働者として扱われることが明確になりました。
技能実習者を労働基準法を適用することで、労働力の確保と労働者の権利の改善をするのが目的です。

したがって、日本人を雇う場合と同じように、雇う場合同じように技能実習生を受け入れた企業は技能実習生に対し、毎月一回以上一定期日に日本の通貨で賃金を支払う必要があり、地域別最低賃金・特定(産業別)最低賃金のどちらか高い方の賃金以上の額を支払わないといけません。

仮に監理団体と労働者が最低賃金を下回る契約をしたとしても、契約は無効になります。

外国人技能者を巡る周辺諸国の実情と最低賃金の上昇

最低賃金で日本人のアルバイトを募集しても中々人が集まらないことから、最低賃金で雇っても問題ないと考えている企業も多いことから技能実習生を積極的に技能実習生を雇う企業もあります。

実際日本で働く方が母国よりも稼げるため、Win-Winの関係といえるでしょう。
ただ途上国における労働力は周辺の韓国や台湾などと取り合いになっています。
日本は実習生への給料未払いなどが起こってしまったため、現地での人気は一昔前と比べてかなり減少してしまったのが実情です。

(参照:https://business.nikkei.com/atcl/report/15/258308/112600166/

周辺諸国との現地の労働力の奪い合いが起こっているため、最低時給では人は集まり難いのが実情となっています。
(参照:https://www.ntv.co.jp/zero/articles/105yvsmw0yo168uqkvu.html

さらに厚生労働省が定める最低時給目標は1,000円となっているので、将来的には時給1,000円がボーダーラインとなるでしょう。

ですが、業務改善助成金制度という補助金制度があることをご存知でしょうか。
この制度は事業所内最低時給が1,000円以下、一定額以上の時給上昇が条件の補助金制度です。

賃金がアップした時のコストの増分を、補助金により一時的に補填するための制度です。企業の金銭的負担分を補い、かつ技能実習生も働きやすい環境にすることが可能となるでしょう。

 

技能実習制度を採用するメリットを理解しよう

発展途上国の若者たちは母国では労働意欲があるにも関わらず、働き口が無い場合や低い賃金でしか働けない環境の外国人が多いです。
前述したように、最低賃金は年々上昇しています。

しかし母国で貰える金額よりは高いため、自分の国にいるよりは日本で実習生として働いて稼ぐ方がメリットは大きいのは間違いありません。また高度な技術や知識を習得することもできるでしょう。

仮に最低賃金であっても魅力的なプラスαがあれば、周辺諸国などにも負けない魅力を実習生に感じさせることができるでしょう。
また実習生を受け入れることで、企業の体制を見直したり、あるいは海外進出への基盤づくりにも繋がる可能性も期待できるでしょう。

今後は日本で起こった事件も少しずつ無くなっていくことでしょう。外国人が安心して働ける労働環境を整えることで、日本が抱える様々な問題解決の糸口になる可能性も秘めています。

日本でも外国人が安心して働ける環境が整いつつある今、うまく活用することによって日本が抱える少子高齢化の問題も解決することもできるのではないでしょうか。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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