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「農業」の現状
日本の農業分野では、深刻な高齢化と後継者不足という問題をかかえているため、農業業界全体が人手不足となっています。
日本の農業就業人口は2010年に約260万人だったのが、2019年には168万人となり、約10年で約100万人が減少しています。
農業就業者の平均年齢も高齢化が進んでおり、2010年に65歳だったのが、2019年には67歳と引き上げられています。
そんな中、日本の農業分野では人手不足を解消するため、外国人労働者の雇用が可能な、技能実習制度、特定技能制度が重要視されてきているのです。
「技能実習制度」とは
「技能実習制度」とは、日本企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れる公的制度です。国際貢献として「実務を通じて習得した技術や知識を母国の経済発展に役立てる」ことを目的としています。
人手不足が深刻化する産業においては、外国人技能実習生を受け入れることで労働力不足をカバーできるといった側面もあります。
担い手農業者(認定農業者)の約11%が技能実習生を受け入れています。
「特定技能制度」とは
「特定技能制度」とは、2019年4月より導入された新たな在留資格です。日本国内において人手不足が深刻化する14業種で、労働力の獲得を目的として外国人の就労が解禁されました。
「技能実習制度」と「特定技能制度」は共に農業分野での外国人労働者の人材確保を行っています。特にこの記事では、「技能実習制度」における農業分野の具体的な業務内容について解説していきます。
技能実習の「農業」
技能実習の「農業分野」の業務内容として、耕種農業は施設園芸、畑作・野菜、果樹の3つの作業で区別され、畜産農業は養豚、養鶏、酪農の3つの作業で区別され合計で2職種6作業となっています。
農業作業の区分について
農業においての、技能実習の対象となる職種・作業について、必須業務、関連業務、周辺業務の3区分に応じ、それぞれ条件に適合することが必要です。
①【必須業務】
技能実習生が修得をしようとする技能等に関する技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の試験範囲に基づき、技能を修得するために必ず行わなければならない業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の2分の1以上です。
②【関連業務】
必須業務に従事する人によって、必須業務に関連して行われることのある業務であって、修得をさせようとする技能の向上に直接、または間接に寄与する業務です。
全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の2分の1以下です。
③【周辺業務】
必須業務に従事する人が必須業務に関連して通常携わる業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の3分の1以下です。
なお、それぞれ、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生に関する業務にあてなければなりません。
農業関係図(2職種6作業)
職種 | 作業名 |
耕種農業 | 施設園芸 |
畑作・野菜 | |
果樹 | |
畜産農業 | 養豚 |
養鶏 | |
酪農 |
技能実習の「農業」の業務内容
耕種農業
耕種農業には、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」の3つの作業があります。
施設園芸
「施設園芸」とは、温室やビニールハウスなどの施設を利用して行う園芸作物(野菜、花卉、果樹等)の栽培です。
「施設園芸」には、小規模なビニールハウス、大規模な鉄骨ハウス、人工的な光を利用する植物工場まで様々あります。
消費者は鮮度が良い野菜をいつでも食べたいというニーズがあり、施設栽培技術は発達・普及していきました。トマト・イチゴ・キュウリ・ピーマンなどの過半数が施設栽培となっています。
◯「施設園芸」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】施設園芸作業、安全衛生作業
【関連業務】畑作・野菜作業、果樹作業、稲作作業、採種用作物栽培作業、農産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】作物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
畑作・野菜
「畑作」とは、畑で農作物(野菜など)を作ることをいいます。
畑作では栽培する農作物に合わせて、土壌養分や畑の形状などを適切になるように調整します。また、同じ作物を作り続けることで起こる生育不良の「連作障害」を避けるために、一定期間に数種類の作物を決まった順序で栽培する「輪作」が実施されることもあります。
畑作の土地利用の技術として、異なる作物を一定期間、同時栽培する「間作」、異なる作物を同一期間に同時栽培する「混作」といった技術が確立しています。
畑作に関する作業は農業機械の普及により効率化になり、ダイナミックな農業を行うことができますが、畑作は長期的な視点で畑と上手に付き合っていく必要があるものになります。
◯「畑作・野菜」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】畑作・野菜作業、安全衛生作業
【関連業務】施設園芸作業、果樹作業、稲作作業、採種用作物栽培作業、農産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】作物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
果樹
「果樹園」とはフルーツ(果物)が栽培されている農園となります。
「果樹園」では、食糧としてフルーツを生産するため、樹木、低木(約3mまでの木)を植えて、手入れを行い維持する必要があります。果樹園は水が得やすく、気候が温和なところに発達します。複数の種を混合して栽培することも多いです。
◯「果樹」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】果樹作業、安全衛生作業
【関連業務】施設園芸作業、畑作・野菜作業、稲作作業、果樹作業の関連作業、
農産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】作物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
畜産農業
畜産農業には、「養豚」「養鶏」「酪農」の3つの作業があります。
養豚
「養豚」とは豚を家畜として飼育し、食肉となる肉豚や、種豚(しゅとん)を生産することをいいます。
養豚業の経営形態としては、次の3種類があります。
「種豚経営」
豚の繁殖・改良などの元となる種豚を生産します。
「繁殖豚経営」
繁殖豚の管理と、その子豚(素豚)を出荷します。
「肥育豚経営」
子豚を肥育し、食用として市場に卸します。
「養豚」において、現在は繁殖から肥育まで行う「一貫経営」が主流で、豚肉生産から加工、販売まで手掛ける多角化経営を行うこともあります。
養豚所で生産された肉豚は、農協や市場を通じて出荷、取引され、食肉センター等で解体されて枝肉となります。その後、衛生検査や正肉部分の格付けをして、各部位が販売されます。流通は食品スーパー、加工・製造メーカー、飲食店等へ枝分かれしていきます。
◯「養豚」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】養豚作業、安全衛生作業
【関連業務】飼料給与作業、堆肥生産作業、飼料生産作業、畜舎清掃作業、畜産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】生産物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
養鶏
「養鶏」とは鶏(にわとり)を採卵や食用にするため飼育することです。
「養鶏」はその目的に応じて二つに分類され、卵を生産するために採卵鶏を飼う「採卵養鶏」と、肉を生産するために食用鶏を飼う「食用養鶏」があります。
日本の養鶏は近代化と大規模化が進んだことで、養鶏場で鶏をケージ(鳥かご)で飼う方法を使い、数万羽~数十万羽の鶏が飼われるようになりました。地鶏の生産などの養鶏場では、放し飼いや平飼いなど、鶏が自由に歩き回れるようにした昔ながらの飼い方が取り入れられています。
採卵養鶏の場合、養鶏場で生産された卵は、GPセンター(卵の洗卵・選別・包装を行う施設)に出荷されます。GPセンターでは最新の機器によって大量の卵が洗卵・選別されることで、MS、M、Lといった規格ごとに分けられパック詰めにされます。
GPセンターで包装された卵は、ここから小売店などに出荷されます。
大規模な養鶏場では、自社内にGPセンターまで完備している場合もあり、生産から出荷まで一貫して行う事もあります。
◯「養鶏」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】養鶏作業、安全衛生作業
【関連業務】肉用鶏生産作業、飼料給与作業、堆肥生産作業、飼料生産作業、畜産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】生産物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
酪農
「酪農」とは、牛や山羊などを飼育し、乳や乳製品を生産する畜産のことをいいます。
その歴史は古く、人類が狩猟生活から農耕生活に入ったのと同時期に、こうした酪農も始まったといわれています。
日本では、主に牛を飼って牛乳を生産する酪農が盛んです。酪農と一口にいっても、数十頭程度の牛を家族で飼う個人牧場から、数千頭の牛を飼う法人牧場まで大小のさまざまな経営規模があります。
近年では、牛乳を生産するだけでなく、生産した牛乳を使って乳製品(チーズ、バター、アイスクリームなど)を加工、販売したり、観光牧場として顧客を呼び込んだりするような多角化経営に取り組む牧場も増えてきています。
◯「酪農」における技能実習生の作業範囲
【必須業務】酪農作業、安全衛生作業
【関連業務】肉用牛生産作業、飼料給与作業、堆肥生産作業、飼料生産作業、畜産物を原材料として使用する製造・加工・販売の作業等
【周辺業務】生産物の構内運搬作業、梱包・出荷作業等
耕種農業で生産される具体的な作物例
技能実習生に対して、「施設園芸」では温室やビニルハウスなどの施設を利用し、「畑作・野菜」の場合は畑(露地)で栽培する作物であることと定められています。
こちらには、技能実習生が取り扱う耕種農業で生産される具体的な作物例について一覧を掲載します。
①穀物〔米を除く〕
麦類
豆類
ダイズ、ソラマメ、インゲンマメ、アズキ、ササゲ、ラッカセイ、エンドウ、リョクトウ、その他の豆類
イモ類
サツマイモ、バレイショ、サトイモ、ヤマノイモ、その他のイモ類
その他
アワ、ヒエ、キビ、ソバ、トウモロコシ、モロコシ、雑穀類
②工芸作物
繊維・紙・敷料
ワタ、アサ、アマ、コウゾ、ミツマタ、イグサ、その他の繊維・紙・敷料
油料
ナタネ、ゴマ、その他の油料
嗜好料
タバコ、茶、ホップ、その他の嗜好料
その他
サトウキビ、テンサイ、コンニャク、クズ、ハッカ、その他の工芸作物
③野菜
果菜類
キュウリ、メロン、マクワウリ、シロウリ、スイカ、カボチャ、トウガン、ユウガオ、ヘチマ、レイシ、
ハヤトウリ、トマト、トウガラシ、ピーマン、ナス、イチゴ、オクラ、その他の果菜類
葉茎菜類
ハクサイ、キャベツ、ハナヤサイ、ブロッコリー、メキャベツ、ネギ、タマネギ、アサツキ、ラッキョウ、ニンニク、ニラ、セルリー、パセリー、ハマボウフウ、レタス、ウド、ミョウガ、シソ、ミツバ、セリ、シュンギク、フキ、ショクヨウギク、ホウレンソウ、アスパラガス、ジュンサイ、タケノコ、タカナ、その他の葉茎菜類
根菜類
ダイコン、ニンジン、カブ、テーブルビート、ゴボウ、ゴボウアザミ、ショウガ、ハス、クワイ、ワサビ、オニユリ、ヤマユリ、その他の根菜類
施設で栽培されたキノコ類
④果樹 (木本性植物の果実及び苗木)
ミカン類、リンゴ、ブドウ、カキ、ナシ、モモ、クリ、クルミ、その他の果樹
⑤草花
切り花
1・2年草(ストック、キンギョソウ等)、宿根草(キク、カーネーション等)、球根類(フリージア、チューリップ等、花木(バラ、ユキヤナギ等)
鉢物(盆栽を除く)
鉢花(シクラメン、ベゴニア等)、観葉植物(ゴムノキ、ドラセナ等)、洋ラン類(カトレア、ハンビジウム等)
芝
⑥他に分類されない作物
飼肥料作物、採種用作物
畜産農業(養豚、養鶏、酪農)で生産される具体的な生産物例
①養豚
種豚、肉豚(3カ月齢以上)、子豚
②養鶏
採卵鶏、鶏卵
③酪農作業
・種牛(18カ月齢以上)
・乳用牛「雌成牛(18カ月齢以上)、雄子牛(18カ月齢未満)、雌子牛(18カ月齢未満)」
・生乳
まとめ
・農業分野の就業者は減少傾向
・「技能実習制度」と「特定技能制度」は農業分野での外国人労働者の就労を行っている
・技能実習の「農業」は耕種農業、畜産農業の2職種6作業ある
これからの人手不足の解消のため、外国人労働者の活躍に期待したいところです。技能実習制度に関するポイントを把握し、農業分野の発展を目指していきましょう。
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- 執筆者
- 外国人労働者ドットコム編集部
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