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【技能実習制度】「繊維・衣服業」の外国人労働者の受入れについて解説

「繊維・衣服業」の現状

業界としての人材不足

衣服、繊維業において
高い技術力を維持しながら低コストで市場に送り出すには、効率よく人材をつなぐことが必要とされます。
しかし現在は、技術力の高い従業員が恒例になっていき、また若い労働者の確保が難しくなっています。

その結果、繊維・衣服業では、人材不足に頭を抱えている企業が多くなっています。

このように人材確保に苦戦している繊維・衣服業の企業が活用しているのが「技能実習制度」です。(「技能実習制度」の概要は、のちに解説。)
技能実習制度のおかげで、なんとか助かっているという企業は多いです。

技能実習生に依存している

繊維・衣服業は、深刻な人材不足に悩まされています。
他の産業でも起こっていることですが、熟練者である高齢社員が退職していく一方、若手の労働者が確保できていません。
そこで、繊維・衣服業は技能実習制度に助けを求め、活用してきました。

繊維・衣服業では、約6,000の受け入れ企業が約30,000人の技能実習生を受け入れています。
この数値は、技能実習生を受け入れている全産業の中で、4番目に多い数値です。
近年の日本の繊維・衣服業は、技能実習生の労働力に依存しているといえます。

2020年に入り、外国人労働者の受け入れに影響を及ぼす新型コロナウィルス。
今後、日本の繊維・衣服業はどうなっていくのでしょうか。

不正行為が多発している

技能実習生の受け入れ人数が多い繊維・衣服業。
母数が多いためか、不正行為の発生件数が多い業種としてあげられています。

平成29年度に、法務省入国管理局が指摘した183社のうち、不正行為の件数は94社。なんと、半数以上を繊維・衣服業が占めています。

不正行為の内容は、
最低賃金・割増賃金の不払い、違法な時間外労働、偽変造文書などの行使・提供、名義貸しなどです。
不正行為が理由で、技能実習生の受け入れが停止となった監理団体があるので、受け入れを考えている事業者の方々は、注意が必要です。

不正行為などの背景

不正行為多発の背景には、過剰供給と単価下落の同時進行による、過酷な市場環境が挙げられています。
日本では1990年以降、ファストファッションの流れに伴い、「安く」「大量」に生産できるラインが次々と海外へ進出しました。衣服の国内生産率は近年では3%程度にまで下がりました。

経済産業省によれば、1990年では約15兆円だった国内の衣料品市場規模は、2010年には約10億円に下がりました。その一方、同時期の国内供給量(国内生産と輸入の合計)は、約20億円から約40億円へ上昇しました。国内での供給単価は20年間で3分の1まで下がりました。さらに総務省の家計調査によると、各家系の衣料品購入単価は、20年間で6割弱までにしか下がっていません。そのため、市場に供給されたにもかかわらず、消費されていない衣料品が多いと考えられています。
したがって、市場規模の額が下がっているにもかかわらず、過剰供給されています。

このような状況の中で衣服・繊維業は、限られた国内工場は海外よりも短い納期且つ高品質な製品生産が求められています。短期スパンでめまぐるしく変わる市場トレンドに、柔軟に対応するためです。その結果、事業所の小規模が進みました。経済産業省によると、2016年時点で国内縫製事業所のうち、従業員数29人以下の事業所が9割以上になっています。
この小規模化と、過酷な市場環境に対応するための極限のコスト削減が組み合わさり、労働環境の劣悪化につながりました。そして、技能実習生を劣悪な労働環境に追い込み、人権侵害が横行しやすい環境が発生してしまいました。

防止に向けた取り組み事例

女性向けブランド服の企画・販売を手がけるある企業は2019年5月、外国人技能実習生と国内生産に関わる問題への取り組みについて発表しました。アパレルメーカー(1次サプライヤー)に対して、製造工場(2次サプライヤー)での、外国人技能実習生の長時間労働・賃金、未払いなどの不正行為に関する「生産・取引の中止」を告げました。さらに、「外国人技能実習生の実態調査」や「社員による工場訪問」などについても言及しました。

同社では社員による直接訪問を当該工場に依頼し、実態調査を試みました。
調査を拒む取引先も多かったようですが、9社15工場中の11工場を訪問。
このように、業界のごく一部ではありますが、技能実習生の労働環境改善に向けた動きがみられています。
今後も、各企業が改善に努めていくことが望まれます。

繊維・衣服業での受け入れ

繊維・衣服業での技能実習生の受け入れは、大手アパレルメーカーの下請けなどの中小企業が多いです。

「自分の会社でも技能実習生を受け入れられる?」という不安を抱える事業者の方がよくいらっしゃいます。
技能実習生は、小企業であっても受け入れることができます。

実際、日本で働く技能実習生32万人のうち、約7割が小企業で働いています。
深刻な人材不足に悩んでいるようでしたら、技能実習生の受け入れを検討してみましょう。

何人ほど受け入れられる?

技能実習生の受け入れ人数には、上限があります。
1年間に受け入れ可能な人数は、

・常勤職員数の数が2名までの場合は、常勤人数と同数まで
・3〜30名までの場合は、最低3名まで

これらの、受け入れが可能になります。

技能実習制度とは

技能実習制度とは、主に新興国の若者が日本の技術を習得し、その技術を母国へ持ち帰る制度です。新興国の若者が日本企業での労働を通して、日本の高い技術を学びます。そしてその技術を母国に持ち帰り、母国の発展を目指します。
技能実習制度を通して、実習生の母国を発展させられる人材を育成し、国際貢献を目指します。
日本製品の製造過程や品質管理、サービスや発信などを実体験として学ぶことができるので、技能実習生やその母国にプラスになります。

この技能実習制度は2010年まで、「外国人研修制度」という名前で運用されてきました。しかし、本来の趣旨に反する運用、目的外の労働の強要・賃金の未払いなど、さまざまな問題が起きていました。
これらの問題に対して制度の再検討を行い、制度の改正を行いました。この際に、「外国人技能実習制度」となりました。

技能実習生受け入れの流れ

ここでは、技能実習生受け入れの大まかな流れを紹介します。
まず、技能実習生を受け入れてから、事前に作成し監督省庁に提出した実習計画に沿って実習を行います。
実習期間は職種によって異なっています。技能自習1号、2号、3号へそれぞれの基準を満たすことで移行し、最長5年間にわたって実習をすることができます。

受け入れを行う準備は多いです。希望する人材の選定や必要な書類の作成・提出、法令によって定められている講習の実施などがあります。

「うちの企業ではこんなにたくさんの手続きができるのか!?」
と思われるでしょう。
ですが、これら全ての手続きを受入れ機関(企業)が行っているケースは少ないです。
監理団体という外部の専門機関へ委託することができ、中小企業など多くの企業が監理団体に委託して運用しています。

監理団体に委託する場合は、以下の流れで技能実習生を受け入れることになります。

【監理団体に加入→現地(外国)で面談→現地で教育(講習など)→日本へ入国→監理団体での講習→受け入れ】

技能実習の「繊維・衣服業」の職種・作業

繊維・衣服業には、13職種22作業があります。

紡績運転

前紡工程

綿状の繊維を解きほぐし、短い繊維や夾雑物(きょうざつぶつ)を取り除き、繊維の平行度、均整物を向上させてスライバーとし、さらに粗糸にする作業です。

精紡工程

精紡機で、粗糸(繊維束)を所定の太さに引き伸ばし、ひねりをかけて糸にする作業です。

巻糸工程

巻糸機で、精紡管糸(コップ)の糸の欠点を除去し、所定のパッケージ(チーズ、コーン)に巻き返す作業です。仕上げ工程とも呼ばれています。

合ねん糸工程

2本以上の糸を引き揃え、均整なひねりをかけて高い強伸度のある糸や、特殊な風合い・見た目の糸を作る作業です。

織布運転

準備工程

整経(せいけい)、糊付(のりづけ)、経通し(へどおし)、緯巻(よこまき)の作業です。

製織工程

準備工程で用意された経糸・緯糸を、織機を使って織物組織になるようする作業です。経糸を開口し、決められた緯密度になるように緯入れ、筬打ちして織物を作ります。

仕上工程

織機で作った織物、生機(きばた)に対し、検反・修正・格付け、折りたたみ・ロール巻、荷造りをする作業です。

染色

糸浸染

浸染用機械を使用し、染料を溶解した染色液に被染色糸をひたし、助剤、温度の働きで繊維に染料を吸着、固着させる作業です。

織物・ニット浸染

浸染用機械を使用し、染料を溶解した染色液に被染色織物・ニットをひたし、助剤、温度の働きで繊維に染料を吸着、固着させる作業です。

ニット製品製造

靴下製造

靴下編立て仕様書に基づき、靴下編機(小直径の丸編機)を使用します。生地を靴下の形状に編み立てる方法により、靴下を製造する作業です。

丸編みニット製造

編立て仕様書に基づき、丸編機を使用します。生地を円筒状に編み立てる方法により、丸編ニット生地を製造する作業です。

たて編ニット生地製造

たて編ニット生地製造

編み立て仕様書に基づき、たて編機を使用し、たて編ニット生地を編み立て製造する作業です。

婦人子供服製造

婦人子供服既製服製造

型紙に従って布地を裁断し、裁断された洋服の部品となる生地をミシンなどで縫製をします。アイロン、プレス操作を行いながら仕上げ、製品検査を行い、夫人・子供既製品服を仕立てる作業です。

紳士服製造

紳士服既製服製造

型紙に従って布地を裁断し、裁断された洋服の部品となる生地をミシンなどで縫製をします。アイロン、プレス操作を行いながら仕上げ、製品検査を行い、紳士既製服を仕立てる作業です。

下着類製造

下着類製造

下着類のパーツとなる生地を多種類のミシン(2点千鳥ミシン、4点千鳥ミシン、本縫い1本針ミシン、本縫い2本針ミシン、1本針オーバーロックミシン、2本針オーバーロックミシン、2重環ミシン、電子サイクルミシン、かんぬきミシンなど)を使用します。縫製・仕上げ、製品検査を行い、下着類を製造する作業です。

寝具製造

寝具製造

測定器具、裁断用機械器具、縫製用機械器具、綿入れ用機械器具および仕上げ用機械器具などを使用します。生地の採寸・裁断、側縫製、綿入れ、綿入れ口縫製、キルティング加工などを施し、かけ布団や敷布団を仕立てる作業です。

カーペット製造

織じゅうたん製造

12尺巾以上の織じゅうたん織機を使用します。パイル糸、地経糸、緯糸、締経(しめたて)糸で織じゅうたんを製造する作業です。

タフテッドカーペット製造

4m巾以上のタフティングマシンを使用します。パイル糸でタフテッドカーペットを製造する作業です。

ニードルパンチカット製造

2m巾以上のニードルパンチ機を使用します。ウェブ用素材でニードルパンチカーペットを製造する作業です。(表皮層を伴う製品の製造限定)

帆布製品製造

帆布製品製造

帆布またはそれと同等の化学繊維材料でできた生地を裁断、縫製し、帆布製品およびテント構造物などを製造する作業です。テント、シート、コンテナバッグなどを取り扱いします。

布はく縫製

ワイシャツ製造

各種布はく縫製品に使用する織物を裁断し、縫製機械を使用して縫製します。ワイシャツを製造する作業です。

座席シート縫製

自動車シート縫製

総合送りミシン、上下送りミシンなどの工業用ミシンを使用して、原反および副資材で出来た生地と部品(レザー、ファブリック、2層ラミネート、3層ラミネートなど)を、手順書に従って縫い合わせ縫製します。自動車シート縫製製品などを製造する作業です。フロントシート、リアシート、ヘッドレスト、アームレスト、ドアトリム、コンソールなどを取り扱います。

まとめ

今回は、「繊維・衣服業」について解説しました。
業界では今、深刻な人手不足、不正行為が起きています。
これを解決するには、技能実習生の積極的な受け入れが必要です。
法令遵守を徹底し、全従業員が働きやすい業界を目指すことが必要です。