特定技能制度

外国人労働者の受け入れ人数を増やすため、2019年の4月から新たに特定技能の在留資格が導入されました。この記事では、特定技能で定められた14業種の内の「自動車整備業」について、分かりやすく解説していきます。

目次

特定技能の「自動車整備業」とは

特定技能とは、日本の産業界における深刻な人手不足を解消するため、2019年の4月から新たに導入された在留資格で、就労可能な在留資格の一種です。

この新しい在留資格を創設する目的は日本の「人手不足の解消」にあります。

人材を確保することが困難な状況にあるため、不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として、14業種の分野が選ばれました。

①介護
②ビルクリーニング
③素形材産業
④産業機械製造業
⑤電気・電子情報関連産業
⑥建設
⑦造船・舶用工業
⑧自動車整備
⑨航空
⑩宿泊
⑪農業
⑫漁業
⑬飲食料品製造業
⑭外食業

この記事では、14業種の中の自動車整備について説明していきます。

そもそも、自動車整備士とは、自動車に不具合がないかを確認し、必要に応じて整備や分解、組み立てなどを行い、調整・修理をするのが仕事です。最大の目的は、自動車の故障や事故の防止になります。

自動車整備士は国家資格のため、スキル別に行われる「自動車整備士技能検定試験」に合格する必要があり、それぞれの試験には受験資格が設けられています。

自動車整備士の資格を取得すると、主に自動車整備工場、カーディーラーや用品店、ガソリンスタンドなどが一般的な就職先となります。職場で働く自動車整備士は男性が多いものの、近年は女性も活躍しています。そこに、特定技能の在留資格を持った、自動車整備士の外国人労働者も新たに加わることになります。

自動車整備業の分野は、若者のクルマ離れや整備要員の平均年齢が上昇しており、人材が不足しています。

日本では、技能移転を通じた開発途上地域への国際協力を目的とした外国人技能実習制度により外国人材を受け入れています。2016年年4月より、自動車整備事業において外国人労働者の受入れが開始しました。
2019年の4月から特定技能でも外国人の受け入れを始めたことにより、これからは技能実習、特定技能の両輪で人材確保を補っていくことになります。

受入見込数

5年間で最大7,000人(受入れの上限として運用)

雇用形態

直接雇用のみで、派遣は認められていません。

自動車整備分野における外国人の受入れの背景

自動車整備要員の人手不足状況

自動車整備要員の人手不足状況には、主に3つの理由があります。

・自動車整備業における従業員数は、約40万人のほぼ横ばいで推移していますが、自動車整備要員の有効求人倍率が上昇するなど、整備業界の人材不足となっています。

・少子化や若者のクルマ離れの進展、職業選択の多様化により、自動車整備士を目指す若者が減少しているものとみられます。

・自動車整備要員の平均年齢は45.3歳に達しており、上昇傾向にあります。

行政による国内への人手不足への対応とは?

特定技能外国人の受入れ以外でも。行政による国内への人手不足への対応として、国土交通省では、若者・女性の自動車整備士への就業促進について、以下の3つについて取り組んでいます。

①運輸支局長等による高等学校訪問
②自動車整備士のPRポスターや動画の作成、インターネットを活用した情報発信
③自動車整備工場の経営者に対する人材確保セミナーの開催

自動車整備業において特定技能1号外国人材が従事する業務とは?

「自動車の定期点検整備」「自動車の分解整備」の作業を一人で適切に行える技能水準が三級自動車整備士相当になります。

自動車の定期点検整備 自動車の分解整備

道路運送車両法に基づく法定点検整備 • エンジン、ブレーキ、ギアボックスなど重要部品
定期点検項目の例

ステアリング装置

ハンドル操作の不具合を防止するため、ロッドおよびアームの緩み、がた、損傷等を点検。

ブレーキ装置

ブレーキの効き不良を防止するため、ブレーキディスクの摩耗および損傷等を点検。

走行装置

ホイールの脱落などを防止するため、ホイールナットおよびホイールボルトの緩み等を点検。

動力伝達装置

走行時の振動や動力伝達不良を防止するため、プロベラシャフト連結部の緩み等を点検。

電気装置

エンジンの始動不良や排気ガス悪化防止のため、点火プラグの状態等を点検。

エンジン

エンジンの不具合を防止するため、冷却装間の水漏れ等を点検。

サスペンション

サスペンションの異音の発生や不具合を防止するため、取付部および連結部の緩み、がた、損傷等を点検。

ばい煙・悪臭のあるガス・有害ガスなど発火防止装置

熱害による火災発生等を防止するため、排出ガス滅少装置の取付の緩みおよび損信等を点検。

自動車の分解整備

自動車の分解整備とは、エンジン、ブレーキ、ギアボックスなど以下の重要部品を取り外して行う整備又は改造ことをいいます。

• 原動機
• 動力伝達装置(クラッチ、トランスミッション、プロペラ・シャフト、ディファレンシャル)
• 走行装置(フロン・トアクスル、リア・アクスル・シャフト等)
• かじ取り装置(ギヤボックス、リンク装置等)
• 制動装置(マスタシリンダ、ブレーキ・チャンバ、バルブ類等)
• 緩衝装置(シャシばね)
• 連結装置(トレーラ・ヒッチ、ボール・カプラ)

特定技能外国人を受け入れるルートとは?

特定技能外国人を受け入れるためには、以下の①と②の試験に合格する必要があります。なお、第2号技能実習(自動車整備職種に限る。)の修了の場合は①と②の試験は免除になります。

①試験により技能及び業務上必要な日本語の能力評価

「自動車整備士技能検定試験3級」または、自動車整備士技能検定3級と同水準程度の「自動車整備分野特定技能評価試験」に合格が必須です。

試験言語:日本語(必要に応じてルビを付す)
実施方法:筆記及び実技方式
実施回数:年おおむね1回程度で、国外の実施

②日常生活で必要な日本語能力の評価

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)のN4以上」に合格が必須です。

①②の試験に合格すれば、受け入れ機関は外国人と雇用契約を結び、特定技能1号支援計画を策定します。地方出入国在留管理局の許可がおりたら、外国人が在外公館に申請することになります。

自動車整備特定技能評価試験の詳しい内容とは?

試験の範囲

試験の範囲は、自動車のシャシ、エンジンに関して、次の範囲になります。

①学科試験の科目

・構造、機能及び取扱法に関する初等知識
・点検、修理及び調整に関する初等知識
・整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
・材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識

②実技試験の科目

・簡単な基本工作
・分解、組立て、簡単な点検及び調整
・簡単な修理
・簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い

特定技能評価試験の形式、問題数及び試験時間

試験の形式はCBT方式で問題数及び試験時間は、次のとおりです。

①学科試験の形式、問題数および試験時間

・出題形式は、真偽法(○×式)
・問題数は30問
・試験時間は60分

②実技試験の形式、問題数および試験時間

出題形式は、いくつかの課題について作業試験または図やイラスト等を用いた状況設定において正しい判別、判断を行わせる判断等試験により行います。
・問題数は3課題で、複数の設問を設けている
・試験時間は20分

合否の基準

・学科試験は正解数が出題数の65%以上
・実技試験は得点合計が60%以上

こちらの記事では、試験の概要についてだけをご説明しましたので、詳細については、「一般社団法人日本自動車整備振興会連合会HP」をご覧ください。

自動車整備業における技能実習と特定技能のスキルの違いとは?

自動車整備業の技能実習のスキル

技能実習の目的は「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする。」と技能実習生の保護に関する法律で定められています。

技能実習は、技能実習1号(1年)→ 技能実習2号(2年)→ 技能実習3号(2年)
という流れで、最長5年、日本で技能実習ができます。
技能実習での詳細のスキルについては、以下のようになります。

自動車整備業の技能実習1号(1年)

評価試験:定期点検整備及び分解整備を 1人で実施できる。
• 定期点検整備にかかる技能を、指導員の立ち会いの下、実習計画に基づき習得します。

自動車整備業の技能実習2号(2年)

評価試験:定期点検整備及び分解整備を1人で実施できる。
• 定期点検整備を1人で実施(技能実習1号修了レベル)。
• 分解整備にかかる技能を、指導員の立ち会いの下、実習計画に基づき習得。

→修了後に特定技能1号(5年) に移行できます。

自動車整備業の技能実習3号(2年)

評価試験:定期点検整備、分解整備及び一般的な装置の故障診断・整備を1人で実施できる。
• 定期点検整備及び分解整備を、1人で実施(技能実習2号修了レベル)。
• 電子装置など一般的な装置の故障診断・整備にかかる技能を、指導員の立ち会いの下、実習計画に基づき習得。

→こちらも、修了後に特定技能1号(5年) に移行できます。

自動車整備業の特定技能のスキル

自動車整備業の特定技能1号

特定技能1号とは、不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識または経験・技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、最長5年になります。
三級自動車整備士に相当しており、定期点検整備及び分解整備を、1人で実施できるレベルです。

特定技能1号の在留資格は、技能実習2号、技能実習3号の終了後に移行できるようになっています。

「自動車整備士技能検定試験3級」or「自動車整備分野特定技能評価試験」と
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」or「日本語能力試験(JLPT)のN4以上」
の2つの資格に合格することでも特定技能1号の在留資格を得ることができます。

自動車整備業の特定技能2号

特定技能2号とは同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、滞在期間に上限がありません。特定技能2号からは、家族へも在留資格が付与されます。

しかしながら、「自動車整備業」においては特定技能2号を当面は創設しない方向なようです。
特定技能2号は14業種の内の「建設業」「造船・舶用工業」の2業種でのみ取得可能です。

「受け入れ機関」に対し特に課す条件とは?

自動車整備分野で特定技能の外国人を雇用する「受け入れ機関」に求められることは以下の通りになります。

1、国土交通省が設置する「自動車整備特定技能協議会」の構成員になること。
2、自動車整備特定技能協議会に対し必要な協力を行うこと。
3、国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査または指導に対し、必要な協力を行うこと。
4、道路運送車両法第 78 条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること。
5、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、以下の全ての条件を満たす登録支援機関に委託すること。
①上記1~3の条件を満たすこと。
②自動車整備士1級もしくは2級の資格を有する者または自動車整備士の養成施設において5年以上の指導による実務の経験を有する者を置くこと。

ほかには、分野横断的に求められる外国人に対する支援(生活オリエンテーション、生活のための日本語習得の支援、外国人からの相談・苦情対応等)が必要です。

まとめ

自動車整備士は高齢化する一方、若者のクルマ離れや少子化で車を必要としない層が生まれるなど、人材不足対策が必要な分野となっています。今後とも、自動車整備業界において、外国人労働者の受入れが期待されます。

参考:国土交通省HP『自動車整備分野における「特定技能」の受入れ

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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