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特定技能「素形材産業」の外国人労働者の受入れについて解説

特定産業分野の「素形材産業」とは?

「素形材産業」は、素材を加工して作った部品を、組立産業に供給する産業のことです。金属などの素材を鋳造(ちゅうぞう)、粉末冶金(やきん)、塑性(そせい)加工の方法により形状を変えます。
「素形材産業」は様々な金属部品を製造し供給するなど、日本の製造業の重要な位置を担っています。例えば、金属部品で作られるものとしてあげられるのは家電製品や自動車など。そう考えると、市民の生活に不可欠な分野であることが分かるかと思います。

そのため、「素形材産業」には今後の持続的な発展が求められ、これが衰退することがあれば私たちの生活に影響を及ぼすと考えられます。「特定技能」による外国人労働者受入れでは、今後の発展のための手段として、「素形材産業」の基本的な知識・技能を有し、現場の状況に応じて自ら考えて作業を遂行できる、いわゆる「即戦力」となる外国人を受け入れることが認められています。
そこで今回は、「素形材産業」における特定技能の活用について解説します。

受入れ見込数

最大で、2万1,500人とされています。
これは、改正入管法を施行した2019年から5年間での受入れ見込み数です。

雇用形態

直接雇用のみです。派遣での雇用は認められていません。

「素形材産業」での外国人労働者の受入れの必要性とは?

素形材産業における2017年度の人手不足数は、求人数と求職者数の差に見られます。有効求人数と有効求職者数に差は約3万人です。素形材産業分野に関連する職業分類の有効求人倍率(2017年度)は2.83倍、職種の有効求人倍率は鋳造製造工3.82倍、鍛造工4.32倍、金属プレス工2.97倍となっています。

素形材の需要は拡大していくと言われており、これに伴い必要な人手の数も増えていくと考えられます。このままでは、人手不足の状態は年々深刻になっていくでしょう。

「素形材産業」における生産性向上と国内人材確保の取組とは?


生産性向上のための取組としては、以下のことが挙げられます。
各企業や業界による
◯生産現場の改善
◯研修・セミナーなど、人材育成に向けた取組

経済産業省による
◯企業の設備投資・IT導入を支援する施策

実際、素形材産業分野を含む製造業の生産性は2012年から2016年までで、年平均約2%(推計値)向上しています。

国内人材確保のための取組としては、以下のことが挙げられます。
各企業や業界による
◯適正取引の推進などによる、適正な賃金基準の確保
◯女性や高齢者も働きやすい現場環境の改善

経済産業省による
◯中小企業で女性、高齢者などの多様な人材を活用する好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及
◯賃上げに積極的な企業への税制支援
◯下請けなどの中小企業の取引改善に向けた取組

実際、就業者種における女性、60歳以上の人の比率は上がっており、
2012年から2017年にかけて2%(推計値)上昇しています。

1号特定技能の「素形材産業」の業務内容

1号特定技能で従事することができる業務は全部で13種類あります。以下の13項目に関して、指導者の指示を理解し、または自らの判断によって業務を遂行することが求められます。

1. 鋳造
溶かした金属を金属の型に流し込み製品を製造する作業です。

2. 鍛造
金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業です。

3. ダイカスト
溶接金属を金型に圧入し、高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する作業です。

4. 機械加工
旋盤、フライス盤、ボール盤などの各種工作機械や切削工具を用いて金属材料などを加工する作業です。

5. 金属プレス加工
金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞りなどを行い成形する作業です。

6. 工場板金
各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業です。

7. めっき
腐食防止などのため金属などの材料表面に薄い金属を被覆する作業です。

8. アルミニウム陽極酸化処理
アルミニウムの表面を酸化させ、酸化アルミニウムの皮膜を生成させる作業です。

9. 仕上げ
手工具や工業機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げおよび組立てを行う作業です。

10. 機械検査
各種測定機器などを用いて機械部品の検査を行う作業です。

11. 機械保全
工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業です。

12. 塗装
塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業です。

13. 溶接
熱または圧力、もしくはその両者を加え、部材を接合する作業です。

「素形材産業」の内訳

素形材産業の内訳は以下の通りです。外国人労働者の就業する事業所が、この内訳のいずれかに該当している必要があります。

◯ 鋳型製造業
◯ 鉄素形材製造業
◯ 非鉄金属素形材製造業
◯ 作業工具製造業
◯ 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
◯ 金属素形材製品製造業
◯ 金属熱処理業
◯ 工業窯炉製造業
◯ 弁・同附属品製造業
◯ 鋳造装置製造業
◯ 金属用金型・同部分品・附属品製造業
◯ 非金属用金型・同部分品・附属品製造業
◯ その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)
◯ 工業用模型製造業

技能実習の「素形材産業」の業務内容

技能実習における業務区分と、区分ごとの作業内容を紹介します。

【業務区分】鋳造
作業: 鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造
根幹となる技能: 溶かした金属を型に流し込み製品を製造する技能。

【業務区分】鍛造
作業: ハンマ型鍛造、プレス型鍛造
根幹となる技能: 金属を打撃・加圧することで強度を高め、目的の形状にする技能。

【業務区分】 ダイカスト
作業: ホットチャンバダイカスト、コールドチャンバダイカスト
根幹となる技能: 溶融金属を金型に圧入し、高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する技能。

【業務区分】 機械加工
作業: 普通旋盤、フライス盤、数値制御旋盤、マシニングセンタ
根幹となる技能: 旋盤、フライス盤、ボール盤などの各種工作機械や切削工具を用いて金属材料などを加工する技能。

【業務区分】 金属プレス加工
作業: 金属プレス
根幹となる技能: 金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞りなどを行い成形する技能。

【業務区分】 工場板金
作業: 機械板金
根幹となる技能: 板金加工については、薄い平らな金属を曲げや打ち出しで加工する技能。工場板金は、各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立ての技能。

【業務区分】 めっき
作業: 電気めっき、溶融亜鉛めっき
根幹となる技能: 腐食防止などのために金属などの材料表面に薄い金属を被覆する技能。

【業務区分】 アルミニウム
作業: アルミニウム陽極酸化処理
根幹となる技能: 「陽極酸化処理」とは、アルミニウム、チタンなどで作成された製品を陽極(プラス極)として、強酸性や強アルカリ性の電解液中で電気分解させ、製品の表面を酸化させる技能。

【業務区分】 仕上げ
作業: 治工具仕上げ、金型仕上げ、機械組立仕上げ
根幹となる技能: 手工具や工作機械により、部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げおよび組立を行う技能。

【業務区分】 機械検査
作業: 機械検査
根幹となる技能: 各種測定機器などを用いて機械部品の検査を行う技能。

【業務区分】機械保全
作業: 機械系保全
根幹となる技能: 工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し、保全する技能。

【業務区分】 塗装
作業: 建築塗装、金属塗装、鋼橋塗装、噴霧塗装
根幹となる技能: 塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う技能。

【業務区分】 溶接
作業: 手溶接、半自動溶接
根幹となる技能: 熱、または圧力もしくはその両者を加え、部材を接合する技能。

「素形材産業」の1号特定技能外国人の基準とは?

在留資格「特定技能1号」で受け入れる外国人労働者は、
・技能水準と日本語能力を測る試験に合格した者
・素形材産業分野の第2号技能実習を終了した者
のどちらかです。

試験に関して、素形材産業分野、産業機械製造産業分野、電気・電子情報関連産業分野の3分野においては、製造現場で行う業務の多くが共通しています。そのため、技能水準および評価方法などを統一し、「製造分野特定技能1号評価試験」として共通の評価試験を実施しています。

「素形材産業」の試験

技能を測る試験「製造分野特定技能1号評価試験」

◯技能水準
「製造分野特定技能1号評価試験」は、素形材産業分野での業務において、『監督者の指示を理解し的確に業務を遂行、または自らの判断により業務を遂行できるものであること』を認定するものです。この試験の合格者は、一定の専門性・技能を用いて稼働する、いわゆる「即戦力」となるための知識・経験を持っていると認められます。

◯試験概要
試験言語: 試験実施国の現地語
実施主体: 経済産業省が選定した機関(技能試験実施機関)
実施方法:
・学科試験
学科知識および実技能力を問う問題について、コンピューター・ベースド・テスティング方式(以下「CBT方式」)、ペーパーテスト方式のうちいずれか。
コンピューターは、テストセンターに設置されているものを使います。

・実技試験
以下のいずれかの方法で実施されます。
①製作等作業試験方式により、制限時間内に物の製作、組立て、調整などを行わせ、その技能を評価。

②CBT方式またはペーパーテスト方式により、技能者として体得していなければならない基本的な技能について。原材料、模型、写真などを提示して、判別・判断などを行わせ、その技能を評価。

合否の基準: 100点満点として、学科試験は65点以上。実技試験の合格基準として、手溶接作業は「JIS Z 381」、半自動溶接作業は「JIS Z 3841」に基づいて判定。その他の試験区分は60点以上で合格。

受験資格者: 原則、試験日に満17歳以上である者。試験実施国の事情を勘案する場合もあります。

試験水準: 技能実習2号修了者が受験する技能検定3級試験程度。
技能実習2号修了者は特定技能1号の試験が免除されるが故の基準と考えられます。

試験科目: 経済産業省が指定する19試験区分についての学科試験および実技試験。
[19科目 … 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装]

素形材産業の技能試験はまだ実施が少なく、2020年2月現在ではインドネシア、フィリピンでの実施のみです。
今後の実施情報に関しては下記のURLからチェックすることができます。

製造分野特定技能1号評価試験(https://sswm-exam.go.jp

日本語能力水準を測る試験

【国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)】
・日本語能力水準
この試験は、在留資格「特定技能」での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を判定するために、国際交流基金が開発・実施する試験です。これに合格した者は、『ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有する者』と認められます。

・評価方法
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング方式

【日本語能力試験(JLPT)】
・日本語能力水準
この試験に合格した者は、「基本的な日本語を理解することができる」と認定されます。そのことから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有するものと認められ、在留資格「特定技能」での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。

・評価方法
実施主体:独立行政法人国際交流基金および日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式

受入れ事業者(特定技能所属機関)に対して課す条件とは?

在留資格「特定技能」での受入れを行う機関は、以下の2つの条件が課されます。

ア.「製造業外国人受入れ協議・連絡会(以下:協議会)」の構成員になること。

イ.一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告、現地調査など、協議会が行うこれらのことに必要な協力をすること。

「製造業外国人受入れ協議・連絡会」の入会申請・会議資料などは下記のURLからチェックすることができます。
経済産業省HP(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/kyogi-renrakukai-nyukai.html

まとめ

素形材産業は生活に不可欠な分野です。そのような産業が衰退してしまえば、生活に支障が出るかもしれません。

重要な分野であるからこそ、人手不足を解消すべきであり、外国人労働者の活躍に期待したいところです。

特定技能のための試験に関してはまだ実施が少ないので、最新情報をチェックしておくことが必要です。