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特定産業分野の「ビルクリーニング業」とは?
「ビルクリーニング業」の主な業務内容は、ビルや商業施設などの、住宅を除く建築物の清潔さを維持することです。
ビルや商業施設などの建築物は日々、多くの人が出入りします。様々な場所から人が訪れるため、様々な汚れが建築物に持ち込まれることが考えられます。
このような様々な不特定多数の人達が利用する建築物を対象に、衛生的環境・美観・安全性を維持し向上させることを目的としているのがビルクリーニング業です。
これだけ聞くと、「ただ掃除する仕事」と思われるかもしれません。しかし、場所・健在・汚れなどに応じて、方法・洗剤・用具を適切に使い、清掃作業を行うことが求められる業務です。
つまり、専門性が必要となります。
このように専門性が求められるビルクリーニング業はいま、深刻な人手不足に陥っています。
人手不足が原因となり、ビルクリーニングが適切に行われなければ、ビルなどの建物の衛生状態は悪くなってしまいます。これは、建物の利用者の健康面の悪化につながると考えられています。
このことから、ビルクリーニング業の人手不足防止に向けた外国人労働者の受入れが必要とされています。
そこで今回は、ビルクリーニング業における外国人労働者の受け入れに関して解説していきます。
人手不足の現状
まず、ビルメンテナンスの業務は大きく分けて3つ、ビルクリーニング(清掃)、設備管理、施設警備です。そのうち最も人手が不足しているのは、今回のテーマであるビルクリーニングです。近年の4年間において、ビルクリーニングの有効求人倍率は1.60(2013年度)から2.95(2017年度)まで上がっています。およそ倍近くに上昇していますね。
2018年に法務省・厚生労働省が公益社団法人全国ビルメンテナンス協会を対象に行ったアンケート及びヒアリング調査においては、ビルクリーニング業界が抱える人手不足の深刻さが見られました。
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会 … 「建築物の快適な環境の確保」という社会的要請に応える公益団体として、内閣府から認定されている公益社団法人。全都道府県に独立した組織があり、地域によって異なる経営課題の解決策として、地方自治体との連絡調整や、従業員に対する従事者研修など様々な活動を行っています。
協会の会員を対象としたアンケート調査によると、「現場の従業員が集まりにくい」と回答した会員の割合は大幅に増えており
59.2%(2013年) → 87.9%(2017年)
となっています。
また、女性や高齢者の雇用は進んでおり、
女性の割合は54.4%、常勤者における60歳以上の高齢者の割合は31.8%、パートタイマーにおける60歳以上の高齢者の割合は60.5%。
これは、他業種と比較して高い数値とされています。
受入見込数
2019年の改正入管法施行による「特定技能」の受入れでは、向こう5年間で、3万7,000人の上限が設定されています。
雇用形態
直接雇用のみです。
派遣雇用は認められていません。
「ビルクリーニング業」での外国人労働者の受入れの必要性とは?
建物の衛生的環境の重要性
近年は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和45年法律第20号。以下: 建築物衛生法)の適用対象と寝る特定建築物が増加しています。これに伴い、ビルクリーニング分野の活躍が求められています。そのため、清掃員の有効求人倍率は上がっています。
建築物の衛生面を配慮するため、労働力がますます必要とされていることがうかがえます。
他業種での就労機会の増加が要因に
ビルクリーニング業に関する職種において、女性または高齢者の就業者は他業種より多いと言われてきました。実際、従業者のうち女性が70.9%、高齢者が37.2%を占めていました(平成27年国勢調査より)。ですが近年、女性・高齢者が他業種での就労機会を得やすくなってきており、これがビルクリーニング業の人手不足の要因となりました。
このまま人手不足が進んでしまっては、建物の衛生的環境への配慮が損なわれます。また、利用者の衛生状態の悪化にもつながります。これを防ぐべく、外国人労働者の受入れが必要とされています。
「ビルクリーニング業」における生産性向上と国内人材確保の取組とは?
生産性向上に向けた取り組みでは、業務の効率化を目指すIT化が進められています。
2017年の公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の調査によると、業務へのロボット導入に関して、約6割の企業が前向きな意思を示しています。また、ビルクリーニング業者、メーカー、ビルオーナーなどが連携して協議会を開催。業務用清掃ロボットの導入に向けた検討、出勤状況をオンラインで把握するなどの業務効率化を目指すIT化を進めています。
国内人材確保に向けた取り組みとしては、主に以下のことが行われています。
◯高齢者雇用の促進
◯経験の少ない若年層が清掃業務に従事できるような環境づくり
◯賃金引き上げに向けた、適正な利潤を確保できる労働単価などの積算。
◯各目的に向けたガイドラインの策定、セミナーの開催など。
高齢者雇用の促進は、「ビルメンテナンス業高齢者雇用促進ガイドライン」に基づいて進められています。このガイドラインは、厚生労働省の産業別高齢者雇用推進事業により、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会において策定されたものです。2015年度の国勢調査によると、ビル・建物清掃員の職種において、従業員のうち65歳以上の高齢者が占めている割合は37.2%となっています。
若年層の雇用環境の整備は、技能検定の制度変更によって進められています。2016年に、技能検定である「ビルクリーニング技能士」の等級を、「単一等級 → 複数等級」と変更しました。これにより、経験の少ない若年層が自分の技能レベルを認識することができるようになりました。このように、意欲・向上心を持って業務に従事できるような環境づくりを進めています。
賃金の引き上げに向けた方策としては、適正な発注ができるような労働単価などの積算が行われています。「ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドライン」が厚生労働省において策定されています。
[ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドライン] (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/4_2.pdf)このガイドラインの策定により、ビルメンテナンス業者が品質確保のための従業員の育成・確保をするため、また、適正な利潤を確保できるようするために、国や地方公共団体などに向けて最新の労務単価などの適切な積算を行っています。これにより、ビルメンテナンス業者が適正な発注ができるように働きかけています。
1号特定技能の「ビルクリーニング業」の業務内容
多くの人が利用する建築物の内部の清掃が業務内容です。
ビルなどの建物における、
・衛生的環境の保護[清潔さ] ・美観の維持[見た目のキレイさ] ・安全の確保、保全[人が安心して利用できるかどうか]
これらを目的に清掃作業を行います。
また業務を進めるにあたって、「場所・部位・健在・汚れ」の違いに応じた「方法・洗剤および用具の使用」ができることが求められます。
要するに、「多くの利用者がいる建築物を、的確に清掃すること」が業務内容です。
特定技能外国人に求められる具体的な項目は、後述する【「ビルクリーニング業」の試験】にて後述する内容を見てみましょう。
特定技能外国人になるための試験は、技能水準が文書で明示されているので、これがふさわしいと考えられます。
技能実習の「ビルクリーニング業」の業務内容
外国人労働者が行う作業は、「必須作業」と「関連作業(周辺作業)」の2種類に分けられます。
必須作業とは、対象の職種で必ず行う作業のことです。
関連作業(周辺作業)は、必須作業に関連する技能などの習得になりうる作業のことです。つまり、「関連作業も行えば、技能実習のさらなる経験が積めるかもしれない!」といえる作業のことです。
また、必須作業は「ビルクリーニング作業」「安全衛生作業」の2つに分けられます。
このうち「ビルクリーニング作業」の作業内容は、技能実習1号、2号(1年目)、2号(2年目)のそれぞれに応じて異なります。
「安全衛生作業」の作業内容は共通です。
作業は以下の表の通りです。
【「技能実習」における作業内容】
「特定技能」と「技能実習」関連性
「ビルクリーニング職種」「ビルクリーニング作業」の第2号技能実習を終了した者は、ビルクリーニング業務で必要とされる一定の専門性・技能を持っており、即戦力となる知識・経験があると評価されます。
「第2号技能実習」と「1号特定技能」、それぞれの業務内容の間に
『場所、部位、健在、汚れなどの違いに対し、方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を行う点』
における関連性が認められるためです。
「ビルクリーニング業」の1号特定技能外国人の基準とは?
◯「以下の試験に合格していること」
1. 「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」
2. 「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)」
◯「ビルクリーニング分野の第2号技能実習を終了していること」
このうちどちらかを満たしていることが基準です。
「ビルクリーニング業」の試験
ビルクリーニング分野で働く特定技能外国人になるための試験内容を紹介します。
この内容は、技能水準や評価方法が明示されているので、外国人の雇用を考えておられる方も参考にすべき内容といえるでしょう。
技能を測る試験「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」
◯技能水準
この試験は、
『多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、場所、部位、健在、汚れなどの違いに対し、作業手順にもとづき、自らの判断により、方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を遂行できるレベルであることを認定するもの』です。
試験の合格者は、
『ビルクリーニング分野において、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するもの』
と認められます。
◯評価方法
試験言語:日本語
実施主体:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
実施方法:実技試験
日本語能力水準を測る試験
*「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」
◯日本語能力水準
この試験は、在留資格「特定技能」での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を判定するために、国際交流基金が開発・実施する試験です。これに合格した者は、『ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有する者』と認められます。
◯評価方法
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング方式
*「日本語能力試験(JLPT)」
◯日本語能力水準
この試験に合格した者は、「基本的な日本語を理解することができる」と認定されます。そのことから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有するものと認められ、在留資格「特定技能」での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価します。
◯評価方法
実施主体:独立行政法人国際交流基金および日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
最新の試験日程・詳細
「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」の最新情報です。
過去問、試験日程、料金、試験内容などの詳細は以下のURLから確認できます。
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会ホームページ(https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/zairyu)
受入れ事業者(特定技能所属機関)に対して課す条件とは?
以下のア〜エの4つの条件が課されます。
特定の業種に登録されていること、特定の協議会の構成員であることが主な条件です。
ア. 以下の2つのうちどちらかの登録を、都道府県知事から受けていること。
・建築物衛生法第12条の2 第1項 第1号に規定する建築物清掃業
・同項(建築物衛生法第12条の2 第1項) 第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業
イ. 厚生労働省が設置する、ビルクリーニング分野の業界団体、試験実施団体、制度関係機関その他の関係者で構成される、
「ビルクリーニング分野特定技能協議会(以下「協議会」)」の構成員になること。
ウ. 協議会に対し、必要な協力を行うこと。
エ. 厚生労働省または、その委託を受けたものが行う調査・指導に協力すること。
まとめ
ビルクリーニング業は、ただ清掃するだけの業務ではありません。適切な業務遂行と、そのための的確な判断力が求められます。
ビルクリーニング業がこのまま衰退すると、私たちが日々当たり前のように使っている建物は汚れてしまい、使えなくなるかもしれません。
そのようなことにならないためには、外国人労働者を受け入れ、人手不足を解消することが必要です。
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- 執筆者
- 外国人労働者ドットコム編集部