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技能実習生によくあるトラブルとは?トラブル防止のために受入れ企業ができることを解説

【事例】 技能実習生によくあるトラブル

技能実習生に関するよくあるトラブルを先に知っておきましょう。
起こりうることを先に知っておけば、辛うじて対応することができるでしょう。

1. 失踪

いわゆる「失踪」は技能実習生のトラブルの中で、最も多いケースです。
失踪の理由として特に多いものは、
「仕事がきつい」
「住み慣れない国での生活がしんどい」
など。

この失踪を防ぐための対策方法はいくつか考えられます。

まずひとつは、
『詳しい仕事の内容・慣れない国での生活で働くことを事前に伝えておく』
です。

失踪する技能実習生の方々の心境として、
きつい仕事そのものが嫌なのではなく、「予想以上にきつかった。」と思っていることが考えられます。
来日前と後の、仕事に対するイメージの『ギャップ』があり、
仕事のキツさ、精神面でのキツさにつながっているかもしれません。

そこで、これを防ぐために、
『詳しい仕事の内容・慣れない国での生活で働くことを事前に伝えておく』
が挙げられます。
具体的には、
『面接時に、どんな作業をするのかを、写真や動画を使って伝える』という方法などが考えられます。

ふたつ目の対策方法は、
『コミュニケーションを丁寧にする』
です。

技能実習生の多くは技能実習が始まる前に日本語勉強しているため、簡単な意思疎通はできます。
ですが難しい日本語、例えば現場での専門用語やそれらの略語など。
これらの聞き慣れないワードを含めた文章を聞き取ることが困難なこともあります。

スピード感がある仕事現場でこのようなコミュニケーションが行われると技能実習生は
・理解が追いつかない
・聞き返すタイミングを失う
・上司の顔色を伺ってしまい、理解不足のまま時間が経つ
などの状況に陥ってしまい、不安や不満が溜まってしまうかもしれません。
そこで、このようなことを防ぐ対策方法として
『コミュニケーションを丁寧にする』
ことを心がけると良いかもしれません。

2. 金銭トラブル

家賃の支払いを取りまとめていた技能実習生が、着服を疑われたため、
職場に居づらくなり失踪した事例があります。実際には着服していなかったことが、後になって分かりました。

金銭面に関しては、
『金銭トラブルが起こらないこと』
ではなく、
『そもそも”疑い”が起こらない』
ことから逆算して対策方法を組み上げることが大切です。

疑う方も疑われる方も気分は良くありません。
失踪することなく身の潔白が証明できたとしても、後の関係性が悪化したままになる恐れがあります。
そのため、”疑い”が起こらないための対策方法を考えることが重要です。

3. コミュニケーション

『コミュニケーション』でのトラブルにはさまざまなケースがあります。ここでは2つのパターンを解説します。

まずひとつめは「言語の壁」です。
日本人従業員と技能実習生の間で起こるトラブルです。
これは前述した通り、日本人従業員が話す日本語が聞き取れず、不安・不満が溜まってしまうパターンです。
実習開始までに日本語をある程度勉強しているため、全く日本語のコミュニケーションが取れないわけではありません。
ですが、専門用語が多く使われている現場では聞き慣れない日本語に戸惑ってしまい、聞き取ることが難しくなります。
聞き返せば解決することなのですが、それ自体が難しい実習生も多く、理解不足のまま時間が経つことにつながります。

実際、仕事でミスをした技能実習生がみんなの前で怒鳴られた際に、今までの鬱憤が爆発したのか、怒鳴った上司に暴力をふるってしまったという事例があります。

これに関しては前述した通り、『コミュニケーションを丁寧にする』という心がけが大事です。

これは労働災害の予防という意味でも重要な問題です。

ふたつめは「ケンカ」です。
これは実習生同士、実習生と近隣の住民の間で起こることが多いです。
寮生活において、複数人の実習生が一部屋に住んでいる場合、日々の生活の中でケンカに発展することがあります。
唯一安らげる場所である滞在施設が居心地の悪い空間になってしまうと、ストレスにつながります。

ひどい場合であると、凶悪犯罪に関わってしまうケースもあります。
平成30年5月、石川県にてベトナム人技能実習生の男が同僚を刃物のようなもので切りつけ、殺人未遂容疑で逮捕される事件がありました。
ケンカがこのような犯罪行為につながることもあります。

職場でも寮でも全員が心地よく暮らせる環境を用意するという対策が望ましいです。

4. 雇用状況(低賃金, 残業代未払い、長時間労働)

外国人技能実習制度においてよく挙げられる問題として多いのが、劣悪な雇用状況。
賃金や労働時間において不当な扱いをする企業があり、トラブルになっています。

まず前提として、技能実習生の労働において基準とされるルールを知りましょう。
基準とされるルールは、日本の労働関係法令です。
団体監理型の技能実習生の場合、2ヶ月間の講習が終了すると、受入れ企業に雇用される労働者となるため、
日本の労働関係法令が適用されます。
そのため技能実習制度において、
・賃金は最低賃金以上
・労働時間は原則として1日8時間, 週40時間まで
などのルールが適用されます。
時間外労働や深夜勤務、休日勤務にはもちろん割増賃金が支払われなければいけません。
「実習生」とありますが、受入れ企業に行けば「労働者」として扱われます。

また、技能実習生は日本人と同等以上の報酬を支払うというルールもあります。

このような中、ルールを守らない受入れ企業があります。
実習先によるタイムカードや勤務記録の改ざんという、悪質なケースも報告されています。

厚生労働省によると、
平成29年に外国人技能実習生を受け入れる企業を対象に労働基準監督機関が行った監督指導は5966件。そのうちの4266件が労働基準関係法令違反と判断されました。(日本人労働者に関する違反も含みます)
違反の内訳は「労働時間」がもっとも多く、次いで「安全基準」「割増賃金の支払い」となっています。

受入れ企業がトラブルの原因になると、日本の技能実習制度に対する信頼が損なわれます。
今後も制度の運用を続けていくためにも労働関係法令の厳守は必須です。

5. 人権侵害(セクハラ・パワハラ)

技能実習生に対する人権侵害もあります。ここでは2つのパターンを解説します。

まず1つめはハラスメント。パワハラ・セクハラです。
技能実習生がセクハラを訴え、裁判になったこともあります。
そもそも技能実習制度とは関係なく、パワハラやセクハラが横行している職場が多いことも事実です。
セクハラに関しては明らかな人権侵害です。またパワハラも内容によっては人権侵害と判断されます。
技能実習生は企業の人材不足を補うためのものではありません。一人の労働者として認められる必要があります。受入れ企業には「技能実習生に専門技術を伝える」という義務があります。
また、技能実習法46条では、脅迫や暴行など精神や身体の自由を拘束した場合、1年以上10年以下の懲役か20万以上300万以下の罰金が科されます。これは監理団体だけではなく、実習生を受け入れた企業も対象になります。

2つめは、「労災隠し」です。
技能実習生がケガをする、また病気になると病院での医療費用がかかります。
その際の費用は保険でカバーすることができます。
ですが、受入れ企業が保険制度を把握していないことが原因で、実習生に費用を負担させてしまうというケースがあります。
またケガや病気が労災にあたる場合は、報告書の提出が必要であるにもかかわらず、未提出のままということも起きています。
1つめのハラスメントの場合と同じく、技能実習生は受入れ企業では一人の労働者として扱われます。
日本の労働関係法令に基づいた適切な雇用が求められます。

このように技能実習生の人権を守るためには、
受入れ企業が法令の内容を把握し、実習生の適切に雇用することが求められます。

トラブル防止のために受入れ企業ができること

送出機関・監理団体を慎重に選ぶ

信頼できる機関であるかどうかを事前に調べ、慎重に選びましょう。
この過程をおろそかにすると、最悪の場合、受入れ機関もトラブルの責任を背負うことになってしまいます。

・法令を遵守しているか
・不当なお金を実習生から徴収していないか
・過去の失踪率
これらに関しては必ずチェックしておきましょう。
その他にも、現地での入国前の教育の内容、契約内容の説明方法、送り出し機関が日本文化に理解があるか、監理団体が技能実習生を大事にしているかなどを確認しましょう。
現在はコロナ禍のため海外渡航が難しいですが、できれば現地の視察は必ず行うべきです。

労働環境を事前に相手に細かく伝えておく

賃金や労働時間などの雇用条件に関して伝えておくことは、いうまでもなく必須です。

細かい費用に関することも事前に実習生側に伝えておくようにしましょう。

実習生の日常生活への配慮

日本の文化や風習の違いに理解が追いつかず、仕事以外の時間でもストレスが溜まってしまうことがあります。技能実習生は家族を母国に残し、日本で働いています。慣れない環境に1人で飛び込むため、ストレスが溜まるのも当然です。日本入国後にホームシックになる可能性があるので、受入れ企業側も気にかけてあげるようにしましょう。

実習生の国の文化を理解する

実習生の文化を理解することで、トラブルを防止することができます。
例えば、実習生が信仰する宗教によっては、礼拝や断食などへの配慮をするなどの対応が必要です。
技能実習生の多くは主にアジア圏出身ですが、国によって考え方や性格も様々です。
国ごとの文化の違いを理解しておきましょう。

技能実習生の相談先の確保

技能実習生が受入れ企業以外の方に相談できる環境を整えることも対策のひとつです。
悩みや不満を抱えていても、受入れ企業の方になかなか打ち明けることができない実習生もいます。
そのような実習生が躊躇わずに相談できる相手を用意するという対策方法です。

徳島県では実習生に対する労働基準違反が社会問題になっていました。
そこで、四国4県の労働組合で協力し外国人労働相談所を開設しました。
実習生からの相談は、賃金やハラスメントに関するものが多いようです。
一人で悩みを抱え込んでいる技能実習生にとって、相談できる場所があることは精神的に大きなプラスとなります。
地域の労働組合に頼らず、企業でも相談できる環境を整えることはとても大切です。
技能実習生の不安が少しでも和らぐような環境作りが必要です。

まとめ

今回は、技能実習生に関するトラブルの事例と対応策を紹介しました。
・コミュニケーションにおける配慮
・他国の文化への理解
・労働関係法令の遵守
などを徹底しておきましょう!