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外国人労働者の給与の適正額とは?最低賃金は適用される?

はじめに

東京商工リサーチの調査で、外国人労働者を最低賃金以下で働かせている企業が、日本全国にあることが発覚したと報じられました。このように、外国人労働者は「給料が低い」「安価な労働力」と考えられることが多くあります。

これはもちろん違法であり、罰せられる恐れすらあります。最低賃金法では、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合、50万円以下の罰金が課せられることがあるとされています。

また、日本人と外国人の間で差が生じることも問題となっています。日本国内で就労していれば、国籍問わず法律、保険などの国の社会保障の対象になります。

いったい、外国人労働者の給与はどうあるべきなのでしょうか?今回は、外国人労働者の給与について解説していきます。

外国人が日本を就労先として選ぶ理由とは

厚生労働省の調査によると、日本で働く外国人労働者数は2018年10月末時点で約146万人います。前年同期比で約18万人増加しており、今後も増加していくと考えられます。

この増加の原因は、政府による「高度外国人材」「留学生」の推進、技能実習制度による実習生の受け入れ推進、そして、「永住者」や「日本人の配偶者」などの在留資格を持つ方々が、日本で就労していることなどが挙げられます。

留学生や日本人の配偶者は、日本で暮らすために職についているといえます。
ではそれ以外の「日本での就労を望む方々」はどのような目的や理由があるのでしょうか。なぜ外国人は「低賃金」と思われてしまう状況の中、日本で就労することを選ぶのでしょうか。

給与水準が高い

三菱東京UFJ銀行のアジア・オセアニア各国(2017年5月)の賃金比較によると、一般工の月額賃金において、日本の横浜が2位となっています。

【アジア・オセアニア各国の一般項の米ドル建て月額賃金の比較】

画像URL: https://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20170515.pdf

一方、国別の国内労働者数はアジア圏内で見てみると、
中国人が372,263人(29.1%)
ベトナムは240,259人(18.8%)
フィリピンは146,798人(11.5%)
と、なっています。
これら2つのデータから、「日本はアジアにおいて賃金が高い国」という認識を持たれるということが考えられます。

このように、日本はアジア諸国において「比較的賃金が高い国」となっています。
そして、比較的賃金が低い国から、就労に来る外国人が増えていると考えられます。

外国人労働者の給料推移

以下は、2018年末の東京商工リサーチ「外国人雇用に関するアンケート調査」においての「在留資格別の外国人材の賃金(月給)(2018年)」のデータです。

このデータから、外国人の給与は、在留資格別で差が大きく開いていることがわかります。
高度外国人材の月給に関しては、30万円以上が5割ほど。それに対して、身分に基づき在留する外国人材は3割程度にとどまっています。技能実習生に関しては、半数以上が15〜20万円に分布しています。

在留資格別の外国人材の賃金(月給)分布

 

(備考)
1.2018年11〜12月実施の東京商工リサーチ「外国人雇用に関するアンケート」調査のデータを基に作成。
2.上記の調査は2018年11月〜12月に実施。
3.複数人いる場合は平均額。
4.月給は年収を12等分した金額。
5.雇用している外国人労働者の中で最も多い職務の賃金。
6.高度人材とは「弁護士、医師、デザイナーなど高度で専門性が高い業種」。厚生労働省「『外国人雇用状況』の届け出状況まとめ」
(2018年10月末時点)によれば、在留資格全体の割合では19.0%。
7.身分に基づき在留する者(日系人等)とは「身分に基づき在留する者(日系人、永住者、日本人の配偶者等)」。同上の割合では33.9%。

8.技能実習生とは「技能実習生(開発途上国の技能移転を目的とした人材)」。同上の割合では21.1%。
9.その他のカテゴリとは「介護福祉士」「外国人調理師、貴金属等の加工職人など」「企業内転勤」「特定活動(EPAに基づく外国人看護師、介護福祉士候補者、ワーキングホリデー)」「資格外活動(留学生のアルバイト等)」「その他」の合計。
同上の割合では26.0%。
10. 外国人労働者全体については、厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」(2018年10月末時点)における外国人雇用
事業所数(日本全国)を産業別に見た割合を使用し、東京商工リサーチ「外国人雇用に関するアンケート」調査(2018)において雇用している外国人の月給を調査した企業サンプルを産業別に見た割合の比をとってウェイト統合したもの。
11. 備考10の産業は、農・林・漁・鉱業、建設業、製造業、卸売業・小売業、金融・保険業、不動産業、運輸業、情報通信業、サービス業他、の9業種。

内閣府政策統括官出所「企業の外国人雇用に関する分析」より引用

外国人の給料を決める要因とは?

令和元年9月の内閣府政策統括官の「企業の外国人雇用に関する分析」において、外国人労働者の給料に影響を与える要因が分析されています。

外国人正社員の場合、個人属性として、就労経験年数、学歴、日本語能力。勤務する企業の属性として、売上高、人手不足感、その企業が属する産業などが有意であるという結果に至りました。

就労経験年数や学歴で左右されるという点に関しては、日本人の場合とあまり変わらないでしょう。パート・アルバイトなどの非正社員に関しては、非正社員の外国人の勤続1年目の時給と、求人募集での時給を比較して分析されています。結果、両者に有意な差は見られませんでした。

これらのことから、正社員、パート・アルバイトなどの非正社員の「給料に影響を与える要因」は、日本人とあまり変わらないということが言えます。
技能実習生の給与が日本人の正社員より低いと言われていることに関しては、後に解説します。

技能実習生の給料推移

外国人技能実習制度は、日本の企業において発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学び、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした公的制度になります。

2011年の調査によると、技能実習生(2号移行申請者)の給与の平均(支給予定賃金)は12.5万円でした。

画像URL: http://www.moj.go.jp/content/000116717.pdf

これは、当時の中学卒などの水準に近く、高卒の初任給より4万円ほど低いようです。このように見てみると、日本人に比べてかなり低い設定であるように感じます。

さらに、この給料から日本語学校などの学費の天引き、自宅の光熱費などの支払いがあったりなど、手元に残るお金は少なくなってしまいます。
いったいなぜ、技能実習生の給料は低くなってしまうのでしょうか。

技能実習生は低賃金になる傾向

技能実習生が低賃金になる主な理由は2つ。
「監理団体という独自のルートで採用されていること」
「技能実習生にかかる人件費が高いこと」

技能実習生は日本で就労する際に独自のルートで採用されています。技能実習生は一般的な労働市場で採用されるのではなく、監理団体を通して採用されています。

「定住者」「永住者」などの在留資格で就労する外国人は日本人と同じ方法で仕事を探します。求人サービスやハローワークなどがそれです。外国人労働者用のサービスもありますが、労働市場自体に、国籍別の手立てはありません。これらは、「求人の際に、国籍別で制限をかけてはいけない」という法律に基づいているものです。

一方、技能実習生は監理団体を通して就労先が決められます。そして、一度雇用関係を結んだら、転職することができなくなります。よって、労働市場の相場の影響を受けにくくなってしまいます。結果、最低賃金に設定し雇用する企業が多くなると考えられます。

また、技能実習生にかかる人件費は、他の労働者に比べて高くなります。採用のための渡航費、監理団体への支払いがあり、賃金を上げることが難しくなってしまいます。

外国人を雇う際の適正額とは?

日本人と同じ基準で

外国人労働者だからといって、特別な給与額設定となることはありません。技術や企業・店舗への貢献度(シフト、出勤数)に応じて給与が変動することはあるかもしれません。ですがそれは、日本人の場合も同じです。要するに、「日本人 or 外国人」という判断基準はないということです。

一方、「日本より賃金が低い国から来ているから、少しくらい低くても…」という声もあるようです。ですが、この考えは好ましくありません。
確かに、日本の賃金はアジアの中でも比較的高いです。しかし、「賃金が低い国から来たから、労働力もそれ相応」ということはありません。日本語が堪能な方、特化したスキルを持つ方などが多くいます。

たとえそうでなくても、日本語学校に通いながら、日本の技能を学びながら就労したいというモチベーションのある方もいます。
今後とも、日本で外国人に就労してもらいたいなら、賃金は日本人と同じ基準で設定し、外国人労働者が日本でのキャリアを構築していけるようなサポート体制を整えていくことが大切です。

外国人労働者に最低賃金は適用される?

給与設定において、「日本人 or 外国人」の区別は関係ありません。日本国内のすべての労働者に対して同じように適用されます。その最低額を定めるのが「最低賃金法」という法律です。その他の「労働法」と呼ばれる分野の法律は、使用者と労働者が雇用関係を結んでいれば適用されるのです。

したがって、外国人にも最低賃金の適用があります。また、社会保険、健康保険、厚生年金など、すべての社会保障も同じです。つまり、日本人と同様の扱いとなります。外国人労働者という理由で、社会保障が低下することはありません。

最低賃金とは

最低賃金とは、労働者及びその家族が、最低限の生活需要を満たすことができる金額であると設定されています。また、最低賃金は土地の物価によって変動します。そのため、就労する都道府県によって適正額が変わってきます。この地域別の最低賃金は、毎年10月1日に改定されます。

なので、数年間にわたって給与額に変動がない場合は注意が必要です。雇用者は使用者に最低賃金以上の給料を払う義務があります。もし最低賃金以下の給料で雇用していた場合は、最低賃金法違反で罰せられます。

就労する業種によっては、最低賃金が割り増しになることがあります。多いのは、電子機器の組立業、鉄鋼業、自動車小売業などの、特殊な技術が必要とされる業種です。特殊な技術を要する仕事は法律により、給料が割り増しになります。ちなみに、これを無視した場合も法律違反となり罰せられます。

なぜ、「外国人は低賃金」といわれるのか

ここまで、「外国人であろうと、給料が安くなることはない」と述べてきました。しかし、外国人労働者に関して「低賃金」のイメージを持たれることがよくあります。
いったい、何故なのでしょうか?

理由は、「技能実習生」として就労に来る外国人が多いためです。前述した通り、この「技能実習生」の半数以上の月給が15〜20万円ほど。日本人からすると、安く感じてしまう額にあるのです。
では、何故「技能実習生」としての就労が多いのでしょうか。

その理由は、日本での「出稼ぎ」目的で就労する人が多いからです。日本の賃金の安い仕事は働き手が減ってきています。少子化などの理由です。しかし、「単純労働」を目的に外国人が就労することは法律上禁止されています。そこで、「技能実習生」として日本に来ることが選択されるのです。言い換えれば、「技能実習生」は日本の技術・知識を学ぶために就労しているはずが、実質的には「単純労働者」としての就労になっているのです。

だからといって、外国人技能実習制度や、監理団体の存在そのものが悪いというものではなく、これは雇用者側の意識の問題になります。雇用者は技能実習生を「単純労働」として扱うのではなく、日本の技術・知識を学んでもらい、技能実習生の母国の経済発展へ貢献してもらうということを意識して制度を利用していくのが大切になります。

まとめ

今回は、外国人労働者の給料について解説しました。日本国内の労働者であれば基本的に、国籍問わず給料が設定されるべきです。しかし、「技能実習生」に関しては、雇用者側が負担する費用があるなどの理由で給料が上がりにくいなどの実態があります。日本は人口減少・少子高齢化社会により、人手不足が加速していくといわれています。

外国人労働者に関しては「安価な労働力」として考えられている実態がありますが、それは間違っていますし、法律で罰せられることもあります。外国人労働者に関する理解をして、円滑に外国人労働者と働ける環境を作っていくことが大切です。