はじめに
介護への需要が高まっている現在、人を募集しても思うように人が集まらないと悩んでいる施設経営者や人事の方も多いのではないでしょうか。
人員不足を解消する手立ての一つとして、在留資格をもつ外国人労働者を雇うという方法があります。
介護の在留資格には全部で4パターンあります。
在留資格「介護」、EPA「介護」技能実習制度「介護」、特定技能「介護」です。
この記事では4つの在留資格のパターンがどのようなものか。また、日本に長期在留できるようになる介護福祉士の受験資格について説明していきます。
また 介護の在留資格にはどのようなものがあるのか、国家資格である 介護福祉士の受験資格がどのようなものかについても解説していきます。
在留資格制度とは
先進諸国の中でも最も早いスピードで少子高齢化が進行している日本は、令和7年度までに介護従事者が約250万人必要とされています。(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000151592.pdf)
介護業界では深刻な人材不足と、質の高い介護への需要が高まっていました。
そこで政府は2017年改正入国管理法によって、介護の仕事に就いている外国人にも在留資格を取得できるようにしました。
改正入国管理法によって、在留資格「介護」が創設されたことで、外国人が介護職員として介護の現場で働くことが可能になりました。
また在留資格「介護」は専門的・技術的分野の外国人の受け入れを目的としているため、後述するEPA「介護」のように受け入国による制限というものはありません。
在留資格「介護」の取得2つのルート
外国人が在留資格「介護」を取得するには大きく2つのルートがあります。
養成施設ルート
養成施設ルートとは養成施設ルートは入国後介護福祉士養成施設である、専門学校や大学、短大を2年以上の過程を修了します。
その後、介護福祉士国家試験を合格して介護福祉士として業務を始め、在留資格「介護」を取得するというルートです。
注意しないといけないのが、平成29年度より養成施設卒業者も国家資格合格が必要となったことです。
しかし令和3年度までの卒業者には卒業後の5年間は経過措置が設けられています。
経過措置というのは、介護福祉士試験に合格できない。または受験をしなかった場合でも (公財)社会福祉信仰・試験センターに登録申請することによって、5年間有効期限の介護福祉士の 登録を受けることができるというものです。
実務経験ルート
実務経験ルートとは技能実習生等で入国し、介護施設等で3年以上勤労や研修を行い介護福祉国家試験へ合格後、介護福祉士として業務に従事し、在留資格「介護」の資格を目指すというルートです。
ただし、「新しい経済対策パッケージ」において技能実習や資格外活動による3年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家資格に合格した外国人に在留資格を認める。とされていて法務省で法務省令の改正の準備をしている最中です。
在留資格「介護」のメリット
在留資格「介護」の資格を取得することで、以下のメリットがあります。
- 受け入れ国による指定がない。
- 在留期間は5年だが更新の回数制限がなくなる。
介護福祉士の資格を得て、業務を始めることで家族の帯同が可能になることと、在留期間更新の回数に制限がなくなるというメリットがあります。
日本への永住には諸々条件はありますが、『10年以上日本に在住していること』という条件は在留資格「介護」の資格を取得することでクリアできる可能性が高くなります。
在留資格「介護」のデメリット
在留資格「介護」のデメリットは、養成施設ルート実務経験ルートの両方とも資格取得に膨大な時間がかかってしまうということです。
特に養成施設ルートには大学や専門学校に通わないといけないので、多額のお金が必要になってしまいます。
また、介護福祉士の国家資格を取得後、帰国してしまう人も多いようです。
EPA「介護」とは
EPAとは経済連携協定のことをいい、インドネシア、フィリピン、ベトナムの三ヵ国が対象です。
また二国間の経済連携の強化を目的としているものです。
就労期間は4年間と決まっていますが、介護福祉士の国家資格に合格した場合は永続的に滞在ができます。
就学コースと就労コースの2つがある
インドネシア、フィリピン、ベトナムの三ヵ国の外国人がEPA「介護」で入国し、在留資格「介護」を取得するには大きく2つのルートがあります。
EPA「介護」の場合も大学などで学びながら、介護福祉士を目指すパターンと介護施設等で就労してから介護福祉士を目指すという2パターンがあります。
就学コース
就学コースとは大学や専門学校などで2年以上学んだ後、介護福祉士の試験を受験し資格を得て介護福祉士として従事をするというものです。
また在留資格「介護」と同様に令和3年度までの卒業者には卒業後5年間経過措置がとられています。
就労コース
就学コースは入国後、介護施設などで勤労・研修を3年以上した後で、介護福祉士の試験での合格、介護福祉士として従事することが目標です。
EPA「介護」のメリット
EPA「介護」には次のようなメリットがあります。
- 政府の政策的な側面からのバックアップがある。
- 政府からの補助金を受けることができる。
在留資格「介護」と同じように介護福祉士として日本で働くことで、永続的に滞在が可能なことと家族の帯同が許可されます。
また、過去EPA介護福祉候補者として4年間、介護分野で就労や研修してきた外国人は、特定技能の介護分野のへの移行の際、技能、日本語試験が免除されるようになりました。
EPA「介護」のデメリット
一方、EPA「介護」には次のようなデメリットがありえます。
- 資格取得後帰国してしまう。
- 介護福祉士の試験に合格できない。
- インドネシア、フィリピン、ベトナムの三ヵ国しか対象としていない。
EPA「介護」は、介護福祉士の資格が取得できなければ、帰国しないといけません。
また資格を取っても帰国をしてしまうという外国人も多いようです。
EPA「介護」は政府からの補助金も受けられるというメリットもある代わりに、介護福祉士試験に合格できない場合帰国をしないといけないことになっています。
技能実習制度「介護」とは
技能実習制度は在留資格「介護」やEPA介護のような人手不足のために人材を受け入れるためのものではありません。
日本で働いて得た技術や知識を習得して母国に帰り、自国の発展に役立ててもらうというのが技能実習制度です。
なので、また技能実習生の受け入れをしているのは、討議議事録ならびに細く討議議事録を締結している中国やインドネシアなど計15ヵ国です。
また雇用契約上では日本人と同等ですが、人手不足だからといって技能実習生をその調整のための労働力として扱ってはいけないことになっています。
技能実習制度「介護」のメリット
技能実習制度「介護」のメリットは2つです。
- 海外企業とのパイプの形成。
- 社内の様々なルール化と作業手順のマニュアル化。
外国人実習生が職場に来ることで、今まで考えることがなかった仕事の効率化が期待できます。
また外国人留学生に『教える』ことで、技術のさらなる向上や社員の意識改革などの大きなメリットが期待できるでしょう。
技能実習制度「介護」のデメリット
技能実習制度「介護」には3つのデメリットがあります。
- 更新はできない。
- 入国時にN4レベルだと1年でN3まで上げないと帰国させられてしまう。
- 基本的に3年までしか就労させることができない。
N4レベルというのは日本語能力試験では『基本的な日本語を理解することができる』というもので。N3は『日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる』というレベルです。
N4で入国してきた外国人労働者たち労働をしながら、1年でN3までレベルアップは非常に困難だといわれています。
また就労期間は様々な条件をクリアした場合に限り5年まで延長が可能となっています。
特定技能・介護とは
2019年4月から導入された新しい在留資格です。
人手不足対応のため一定の専門制・技能をもつ外国人を受け入れるというのが、在留資格特定技能です。
特定技能には建設業や介護業など合わせて14種類の業種で外国人の就労が可能になりました。
特定技能には1号と2号があり、現段階では特定技能・介護は1号だけとなっています。
注意しないといけないのが、特定技能1号は従事する業務は以下2つと決まっていることです。
- 身体介護等(利用者の心身の状態に応じた入浴と食事排せつなどの介助)
- 支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助など)
訪問介護などの訪問サービスは行ってはいけないことになっています。
また特定技能1号で介護の仕事を3年以上続け、介護福祉士の資格を取得することで在留資格・「介護」への移行できるように現在検討されています。
特定技能「介護」のメリット
特定技能「介護」には次のようなメリットがあります。
- 試験に合格しているため、比較的日本語の能力が高い。
- 即戦力に近い形で働いてもらうことが可能。
特定技能「介護」は入国前に日本語の試験と技能試験を受験し、合格しないといけません。従って、入国してすぐに働いてもらうということもできます。
特定技能「介護」のデメリット
一方、特定技能「介護」のデメリットとしては次のようなものがあります。
- 家族の帯同は許されていない。
- 5年間しか就労することができない。
- 比較的レベルの高い日本語試験と技能試験がある。
特定技能「介護」の場合、現在検討されている最中ですが、介護福祉士の資格を取ることで在留資格「介護」への移行の可能性があります。
在留資格「介護」を得るためには
最後に在留資格「介護」の資格を得るためにはどのようにすればいいのかを書いていきます。
介護福祉士の資格を取る必要がある。
EPAや技能実習など4つの在留資格共に介護福祉士の資格を取らないと、在留資格「介護」の資格を取得することはできません。
そしてEPAや在留資格介護の場合、経過措置がありますが、特定資格・介護や技能実習生の場合、経過措置というものはないので覚えておく必要あります。
しかし介護実習生の場合は
- 外国人技能実習生として3年以上働く。
- 介護福祉士の試験に合格すること。
- 技能実習後、一旦帰国し在留資格「介護」に変更。
- 再入国し、介護士として働く。
以上4つの条件をクリアすることで、在留資格「介護」へ移行することが可能です。
介護福祉士の受験資格は?
養成施設ルート、実務経験ルート、EPAルートの3種類です。
養成施設ルート、実務経験ルートは前述しているので、残りのEPAルートを説明していきます。
また技能実習生、特定技能・介護から介護福祉士の場合は若干違ってくるので、後述説明します。
EPAルート
実務経験ルートと一緒で3年以上(従業機関3年以上、従事日数が540日以上)に介護業務に従事した方です。
技能実習生から介護福祉士になるには?
技能実習生から介護福祉士になるには、2017年12月経済財政諮問会議で、外国人技能実習生が3年以上働き、介護福祉士の国家資格に合格すれば、在留資格を変更するとしました。
ですので、技能実習生から介護福祉士になるためには、3年以上福祉施設で働くというのが受験資格となります。
仮に技能実習生が日本に在留できる5年の間に、介護福祉士の試験に合格できなかったとしても特定技能1号への移行ができます。
移行が認められれば、3年以上介護施設で就労した後、再び介護福祉士の国家試験を受けるチャンスがあります。
特定技能・介護から介護福祉士になるには?
現段階では特定技能・介護から介護福祉士になるための法整備はできていません。
ですが前述したように技能実習生から在留資格「介護」への移行は、2017年に見直されました。
従って将来、特定技能・介護も在留資格「介護」へと移行できるようになる可能性もあります。
今のうちに介護福祉士の資格を取っておくのも良いでしょう。
特定技能・介護から介護福祉士からなる方法は、介護施設で3年以上働くことで、介護福祉士への受験資格を得ることができます。
まとめ
今回は在留資格の種類と外国人の介護福祉士の受験資格について説明しました。
特定技能「介護」以外の介護の在留資格は介護福祉士の資格を取得することで、在留資格「介護」を得ることができます。
また特定技能「介護」に関しては現段階で、在留資格「介護」への移行は認められていませんが、現在検討中なのでかなり期待ができるのではないでしょうか。