全般

この記事では、創作活動を行う外国人が日本へ来る際に取得する在留資格「芸術」について解説しています。

在留資格「芸術」は、受賞歴などの実績や、日本において安定して生活ができる収入が見込めるなどの要件があります。

また、芸術に関する活動をしていても、その活動内容によっては「興行」や「文化活動」などの「芸術」以外の在留資格に該当することがあります。
そのため、『私の活動は「芸術」に該当しますか?』という疑問が多くあげられます。

そこで今回は、
在留資格「芸術」を運用するあなたが、これからもつ疑問を全て解決するために、
要件や活動内容について、この記事で解説します。

在留資格の申請に必要な資料についても、ここで確認できますので
ぜひお読みください!

在留資格「芸術」とは

在留資格「芸術」は、創作活動を行う作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、著述家、写真家など
芸術活動を行う外国人が日本に来る際に取得する在留資格です。

芸術分野における国際交流の機会を増やし、日本の各芸術分野の向上・発展をもたらすために設けられました。

この在留資格「芸術」は、芸術に携わっていれば必ず取得できるというわけではありません。

・展示会での受賞歴や芸術上の活動の指導者として相当程度の実績がある
・芸術上の活動のみによる収入で、日本において安定した生活を営むことができる

などの要件を満たす外国人が取得できます。

1. 活動内容

法令上は以下のように定められています。

『収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(在留資格「興行」に係るものを除く。)該当例としては、作曲家、画家、著述家など。』

在留資格「芸術」に該当する外国人は、芸術状の活動を行う外国人です。
具体的な活動内容としては、以下の2点が挙げられます。

1. 創作活動を行う作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、著述家および写真家等の芸術家
2. 音楽、美術、文学、写真、演劇、舞踊、映画その他芸術上の活動について指導を行う者

2. 在留期間

5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかです。

在留資格「芸術」を取得するための要件(基準)

在留資格「芸術」を取得するために押さえるべき要件は以下の3つです。

1. 日本での活動内容が「芸術」に該当するかどうか
2. 「芸術」の活動だけで日本で生活することができるかどうか
3. コンクールや展覧会での受賞歴など、芸術における実績があるかどうか

これらの要件について細かく確認しましょう。

1. 日本での活動内容が「芸術」に該当するかどうか

「海外から日本に来るアーティスト」、「大学で講義をすべく日本に来る芸術家」などは、いったいどの在留資格に該当するのか、在留資格「芸術」に該当するのかが曖昧なため、疑問点として上がることがよくあります。

この項で確認しましょう。

事例① ライブ・コンサートのために日本へ来るアーティスト

入国の目的が「芸術を公衆に披露する」場合は、在留資格「興行」に該当します。

事例② 収入が伴わない芸術活動

収入が伴わない場合の芸術活動は「文化活動」の在留資格に該当します。収入が伴う場合は「芸術」です。

事例③ 大学等における芸術に関する教育・研究

大学等における芸術に関す教育・研究は、「教授」の在留資格に該当します。

事例④ 外国からダンサーを呼ぶ場合

不特定多数の方に向けてショーなどを行う場合は「興行」の在留資格に該当します。
個人で芸術の追求をする、または後進に指導をする場合は「芸術」に該当します。

事例⑤ 自身が製作した絵画を日本で販売する場合

製作した絵画を日本で販売する活動は、「芸術」の在留資格を得るために必要な創作活動とはみなされません。よって、在留資格「芸術」を取得することはできません。

事例⑥ オーケストラの指揮者の仕事で来日する場合

収入を伴う、かつ芸術に関する活動であっても、活動内容がコンサートなどの「興行」に該当する場合は、「芸術」ではなく、「興行」の在留資格が適用されます。

2. 「芸術」の活動だけで日本で生活することができるかどうか

在留資格「芸術」で入国する場合は、芸術活動による収入のみで生活できるようにする必要があります。
つまり、芸術活動から得られる収入があまりにも低い場合は、「日本での生活は継続できない」とみなされ、在留資格の申請が不許可になる可能性が高くなります。

「実績づくりのために、まずは無報酬で仕事を受注したい!」という場合も不許可になります。

この基準の金額については、2022年10月現在では明示されていません。
ですが過去の事例からは、30万円がボーダーであるといわれています。

また、芸術活動で得られる収入が、「雇用契約の基での収入であるかどうか」は問われません。
つまり、複数の会社との契約により報酬を確保することもできるので、複数の機関と契約した場合に1社からの報酬だけでは不安であれば、2社目、3社目の契約機関の資料も併せて申請する方が安全でしょう。

3. コンクールや展覧会での受賞歴など、芸術における実績があるかどうか

受賞歴などの芸術における実績は、申請者の芸術性を評価するためのものではなく、
上記の「安定した収入」についての参考として扱われます。

実績は必ずしも必要というわけではありません。ですが、実績がない場合は、その代わりにそれなりの経歴が必要です。
例えば写真家であれば、
海外の大手出版社での出版実績、大手企業やハイブランドとの仕事など、
「大きな案件を受けたことがある」という経験があれば、受賞歴がなくても許可を得られる取得の可能性は上がります。

実績に関する審査は、明確な基準がありません。
芸術における様々な受賞歴があれば、審査上有利であることはいうまでもありませんが、
実績がない場合には、その代わりとなるような活動歴を書面で疎明していくことが必要でしょう。

在留資格の取得申請

申請の流れ

まずは申請の大まかな流れを確認しましょう。

【ステップ1】 申請に必要な書類を揃える、または作成します。

必要な書類の内容は場合によって若干異なるため、後述します。

【ステップ2】 出入国在留管理局へ申請

揃えた書類を入国管理局へ持っていき、申請します。

【ステップ3】 結果の通知

申請時に必要書類として返信用封筒(もしくはハガキ)を提出します。
その封筒にて結果の通知が届きます。

【ステップ4】 出入国在留管理局にて残りの手続き

◯ 在留資格認定証明書交付申請の場合
必要な手続きはありません。

◯ 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の場合
入国管理局へ行き、収入印紙を購入し、受領サインをします。

オンラインで申請ができる場合もあります。

 

用意する書類

1. 在留資格認定証明書交付申請書 1通

2. 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
申請前3ヵ月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なものである必要があります。
写真の裏面に申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄に貼付してください。

3. 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通

4. 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1) 公私の機関または個人との契約に基づいて活動を行う場合
活動の内容、期間、地位及び報酬を証明する文書 1通

(2) 公私の機関または個人との契約に基づかないで活動を行う場合
申請人が作成する具体的な活動の内容、期間および行おうとする活動から生じる収入の見込額を記載した文書(適宜の様式で記載していただいてかまいません。)  適宜

5. 芸術活動上の業績を明らかにする資料
(1) 芸術上の活動歴を詳細に記載した履歴書 1通
(2) 次のいずれかで、芸術活動上の業績を明らかにすることができるもの

a. 関係団体からの推薦状 1通
b. 過去の活動に関する報道 適宜
c. 入賞、入選等の実績 適宜
d. 過去の作品等の目録 適宜
e. 上記aからdに準ずるもの 適宜

在留資格変更許可申請

既にほかの在留資格を持って日本に滞在されている方が、活動内容を「芸術」に変更すべく、申請を行う場合についてです。

1. 在留資格認定証明書交付申請書 1通

2. 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
申請前3ヵ月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なものである必要があります。
写真の裏面に申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄に貼付してください。

3. パスポートおよび在留カード 提示

4. 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1) 公私の機関、または個人との契約に基づいて活動を行う場合
活動の内容、期間、地位および報酬を証明する文書 1通

(2) 公私の機関、または個人との契約に基づかないで活動を行う場合
申請人が作成する具体的な活動の内容、期間および行おうとする活動から生じる収入の見込額を記載した文書(適宜の様式で記載していただいてかまいません。)  適宜

5. 芸術活動上の業績を明らかにする資料
(1) 芸術上の活動歴を詳細に記載した履歴書 1通
(2) 次のいずれかで、芸術活動上の業績を明らかにすることができるもの

a. 関係団体からの推薦状 1通
b. 過去の活動に関する報道 適宜
c. 入賞、入選等の実績 適宜
d. 過去の作品等の目録 適宜
e. 上記aからdに準ずるもの 適宜

在留期間更新許可申請

既に在留資格「芸術」により日本に滞在されている方が、同じく在留資格「芸術」の活動を継続して行う場合の申請です。

1. 在留資格認定証明書交付申請書 1通

2. 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
申請前3ヵ月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なものである必要があります。
写真の裏面に申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄に貼付してください。

3. パスポートおよび在留カード 提示

4. 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1) 公私の機関、または個人との契約に基づいて活動を行う場合
活動の内容、期間、地位および報酬を証明する文書 1通

(2) 公私の機関、または個人との契約に基づかないで活動を行う場合
申請人が作成する具体的な活動の内容、期間および行おうとする活動から生じる収入の見込額を記載した文書(適宜の様式で記載していただいてかまいません。)  適宜

5. 住民税の課税(または非課税)証明書、および納税証明書(1年間の総所得、および納税状況が記載されたもの) 各1通

※ 1月1日現在お住まいの市区町村の区役所・市役所・役場から発行されます。
※ 1年間の総所得、および納税状況(税金を納めているかどうか)の両方が記載されている証明書であれば、いずれか一方でかまいません。
※ 入国後間もない場合や転居等により、お住まいの区役所・市役所・役場から発行されない場合は、最寄りの地方出入国在留管理官署にお問い合わせください。

在留資格取得許可申請

すでに日本に滞在している方が、在留資格「芸術」を取得する場合に必要な書類です。

1. 在留資格認定証明書交付申請書 1通

2. 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
申請前3ヵ月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なものである必要があります。
写真の裏面に申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄に貼付してください。

3. 以下の区分により、それぞれ定める書類 1通
(1) 日本の国籍を離脱した者:国籍を証する書類
(2) (1)以外の者で在留資格の取得を必要とするもの:その事由を証する書類

4. パスポートおよび在留カード 提示

5. 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1) 公私の機関、または個人との契約に基づいて活動を行う場合
活動の内容、期間、地位および報酬を証明する文書 1通

(2) 公私の機関、または個人との契約に基づかないで活動を行う場合
申請人が作成する具体的な活動の内容、期間および行おうとする活動から生じる収入の見込額を記載した文書(適宜の様式で記載していただいてかまいません。)  適宜

6. 芸術活動上の業績を明らかにする資料
(1) 芸術上の活動歴を詳細に記載した履歴書 1通
(2) 次のいずれかで、芸術活動上の業績を明らかにすることができるもの

a. 関係団体からの推薦状 1通
b. 過去の活動に関する報道 適宜
c. 入賞、入選等の実績 適宜
d. 過去の作品等の目録 適宜
e. 上記aからdに準ずるもの 適宜

まとめ

今回は、在留資格「芸術」について解説しました。
他の在留資格との違い、申請する際に満たすべき要件などをしっかりと確認しておくことが重要です。

特に、「興行」「文化活動」との活動内容の違いは、しっかりと確認しておきましょう。
在留資格を運用する際は、「申請者の活動が、本来の活動内容に該当しているか」が重要とされます。

申請者本人、また招へいする方、それぞれが把握しておくようにしましょう。

参考URL
◯ 出入国在留管理庁『在留資格「芸術」』
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/artist.html

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執筆者
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