全般

近年、インバウンド需要の増加に伴い、宿泊業界は活況を見せてきました。しかし、同時に深刻化する人手不足は、業界全体の成長を阻害する大きな課題となっています。
この課題解決の糸口として、外国人労働者の受け入れが注目されています。政府も積極的に外国人労働者の受け入れを推進しており、宿泊業界においても様々な在留資格が用意されています。
この記事では、宿泊業界における外国人労働者の必要性と、受け入れ可能な在留資格について詳しく解説します。それぞれの資格の要件を理解し、自社の経営状況やニーズに合った適切な制度を活用することで、人手不足の解消と更なる事業発展を目指しましょう。

宿泊業界の現状

外国人旅行者数の増加と宿泊需要の高まり

2010年代以降、日本を訪れる外国人旅行者数は増加の一途を辿っていました。2019年には過去最高の約3,188万人を記録し、観光業は日本の経済成長を牽引する産業として大きな期待が寄せられていました。

しかし、2020年以降は新型コロナウイルスの影響により、インバウンド需要は激減しました。2023年に入り、水際対策の緩和や円安の影響もあり、訪日外国人旅行者数は回復傾向にあります。この様な状況下で宿泊施設の拡充だけでなく、質の高いサービスを提供できる人材の確保が急務となっています。

人手不足の深刻化

外国人旅行者数の増加に伴い、宿泊施設の数は増加傾向にありましたが、同時に人手不足も深刻化しています。特に、客室清掃やレストランサービスなど、お客様と接する機会が多い現場では、より一層人手不足が顕著です。

人手不足の要因としては、以下のような点が挙げられます。

  • 少子高齢化による労働人口の減少
    日本は世界でも有数の少子高齢化社会であり、生産年齢人口の減少は深刻な問題となっています。出生率の低下と平均寿命の延びにより、労働力人口が減少し、人手不足に拍車をかけています。
  • 他産業と比較して賃金水準が低いこと
    宿泊業は、他の産業と比較して賃金水準が低い傾向にあり、求職者にとって魅力に欠けるという現状があります。特に、重労働や長時間労働を伴うイメージが強く、若年層を中心に敬遠されがちです。
  • 労働時間の長さや業務の負担感
    宿泊業は、お客様の多くのニーズに対応する必要があり、労働時間が長くなりがちな上、業務内容も体力的に厳しいものが多いため、離職率が高い傾向にあります。シフト制で不規則な勤務形態になりやすく、ワークライフバランスの面でも課題を抱えています。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響
    感染拡大防止のための休業や営業時間短縮要請により、多くの宿泊施設が経営難に陥り、従業員の解雇や採用抑制を余儀なくされました。また、感染リスクへの懸念から、宿泊業に従事することに不安を感じる人も多く、求人活動が難航しています。

これらの要因が複合的に作用し、宿泊業界の人手不足は深刻化しており、早急な対策が求められています。

外国人労働者受入れのメリット

このような状況下、外国人労働者の受け入れは、宿泊業界の人手不足を解消するための有効な手段の一つとして期待されています。

外国人労働者を受け入れるメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 人手不足の解消
    外国人労働者を受け入れることで、不足している労働力を補うことができます。特に、特定技能制度を利用することで、宿泊業務に必要な技能を習得した人材を確保することが可能です。
  • 外国人旅行者への対応強化
    外国人労働者は、母国語以外の語学力を持つ人材を確保できる可能性があるため、増加する外国人旅行者への対応を強化することができます。言葉の壁をなくすことで、きめ細やかなサービスを提供し、顧客満足度向上につなげることができます。
  • 多様な文化や価値観を取り入れたサービス提供
    外国人労働者を受け入れることで、多様な文化や価値観を取り入れたサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上に繋がる可能性があります。多様な視点を取り入れることで、より魅力的な宿泊施設づくりが可能になります。
  • 新たな視点の獲得
    外国人労働者を受け入れることで、今までになかった視点やアイデアを得ることができ、サービスの向上や業務の効率化に繋がる可能性があります。外国人労働者の発想や経験を活かすことで、競争力強化につなげることが期待できます。
  • 地域経済の活性化
    外国人労働者が地域に定住することで、消費活動が活発化し、地域経済の活性化に繋がる可能性があります。外国人労働者も地域社会の一員として、地域経済の活性化に貢献することができます。

外国人労働者の受け入れは、単に人手不足を解消するだけでなく、宿泊施設のサービス向上や地域経済の活性化など、多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。

宿泊業で外国人労働者の受入れが可能な在留資格

外国人労働者を受け入れるためには、適切な在留資格を取得する必要があります。ここでは、宿泊業界で利用可能な主な在留資格を紹介します。

特定技能

特定技能制度は、2019年4月に導入された比較的新しい在留資格です。人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れる制度です。

特定技能1号(宿泊分野)の要件と業務内容

特定技能1号(宿泊分野)は、ホテルや旅館などの宿泊施設において、接客、客室清掃、ベッドメイキングなどの業務に従事することができます。

取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 宿泊分野における技能試験に合格していること
    技能試験は、日本国内外で実施されており、宿泊業務に関する知識や技能が問われます。
  • 日本語能力試験N4レベル以上の日本語能力を有すること
    日本語能力試験は、日本国内外で実施されており、日常生活や仕事で必要な日本語能力を測る試験です。N4レベルは、「基本的な日本語を理解することができ、簡単なやり取りができる」というレベルで、日常生活を送るには十分なレベルですが、業務内容によっては、より高いレベルの日本語能力が求められる場合もあります。

特定技能2号(宿泊分野)の要件と業務内容

特定技能2号(宿泊分野)は、特定技能1号の業務に加え、宿泊施設の管理業務やサービスの企画・開発などの業務に従事することができます。

取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 特定技能1号として2年以上の実務経験があること
    宿泊分野において、特定技能1号として2年以上の実務経験が必要です。2年間の実務経験を通じて、日本の宿泊業界における知識や技能を習得していることが求められます。
  • 宿泊分野におけるより高度な技能試験に合格していること
    技能試験は、特定技能1号の試験よりも難易度が高く、宿泊業務に関するより高度な知識や技能が問われます。
  • 日本語能力試験N2レベル以上の日本語能力を有すること
    日本語能力試験N2レベルは、「日常生活で支障なく日本語を使うことができ、複雑な内容のやり取りもある程度できる」というレベルです。業務上、日本人スタッフや顧客と円滑なコミュニケーションをとるために必要な日本語能力を有していることが求められます。

特定技能2号の在留期間は更新が可能で、家族の帯同も認められています。特定技能2号は、特定技能1号よりも在留資格の更新が容易であり、家族帯同も可能であることから、長期就労を希望する外国人にとって魅力的な選択肢となります。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務ビザは、専門的な知識や技術を要する業務に従事する外国人が取得できる在留資格です。高度な専門知識や技能を有する外国人が、日本で就労することを希望する場合に、取得を検討するビザです。

ホテルマネジメント、語学力など専門知識を要する業務

宿泊業界では、ホテルマネジメント、語学力、調理、サービスなど、専門的な知識や技術を要する業務が多くあります。これらの業務に従事する外国人は、技術・人文知識・国際業務ビザを取得する必要があります。

具体的な業務例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ホテルマネジメント: ホテルの経営企画、マーケティング、人事、経理、総務など高度な知識や経験が求められます。
  • 語学: 外国人客への対応、翻訳、通訳など。高い語学力を活かして、外国人顧客への接客や観光案内、翻訳・通訳業務などを行います。
  • 調理: 料理に関する専門知識や調理技術を活かして、宿泊施設内のレストランなどで調理業務を行います。

就労ビザ取得の要件

技術・人文知識・国際業務ビザを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 大学卒業以上の学歴または10年以上の実務経験があること
    従事しようとする業務に関連する分野において、大学卒業以上の学歴または10年以上の実務経験が必要です。学歴や実務経験を通じて、専門的な知識や技能を身につけていることを証明する必要があります。
  • 従事する業務内容に関連する知識や経験を有すること
    採用企業が求める業務内容に合致する専門的な知識や経験を有している必要があります。採用企業が求める業務内容に対して、十分な知識や経験を有していることを、面接や書類選考を通じてアピールする必要があります。
  • 日本人と同等以上の報酬を受けること
    日本人と同等以上の報酬を受けることが条件となります。これは、外国人労働者の賃金が日本人の賃金水準を下回らないようにするためです。日本人の賃金水準は、厚生労働省が毎年公表している「賃金構造基本統計調査」などを参考に判断されます。

技術・人文知識・国際業務ビザの在留期間は、業務内容や契約期間によって異なりますが、最長5年間です。家族の帯同も認められています。在留期間中は、就労ビザを取得した業務内容に従事する必要があります。また、ビザの更新は可能ですが、更新の際には、引き続き就労ビザの要件を満たしている必要があります。

技能実習制度

技能実習制度は、発展途上国の若者を対象に、日本で働きながら技術や知識を習得してもらう制度です。開発途上国等の外国人が、日本の企業や団体において、一定期間、技能、技術又は知識を習得するための活動を行い、これを通じて、外国人の技能水準の向上を図り、その国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。

対象となる職種と業務内容

ホテルや旅館といった宿泊業でも技能実習の「宿泊職種」での受け入れが行われています。

業務内容は以下になります。

・利用客の送迎作業

・滞在中の接客作業

・会場の準備・整備作業

・料飲提供作業

・利用客の安全確保と衛生管理

・安全衛生業務

 

技能実習生を受け入れるためには、技能実習計画を作成し、出入国在留管理庁に提出する必要があります。技能実習計画には、技能実習生の受け入れ目的、実習内容、指導体制、生活指導計画などが記載されている必要があります。企業が技能実習生を受け入れる際には、法令を遵守し、適切な労働条件や生活環境を提供することが重要です。

その他の在留資格

上記の在留資格以外にも、外国人経営者が日本で事業を行うための「経営・管理ビザ」や、高度な知識や経験を有する外国人を対象とした「高度専門職」など、様々な在留資格が存在します。

経営・管理ビザ

外国人経営者が日本で会社を設立する場合や、海外の会社の日本支社に勤務する場合に取得することができる在留資格です。

取得するためには、事業計画書や財務諸表などを提出する必要があり、審査も厳しいため、取得のハードルは高めです。

高度専門職

高度な知識や経験を有する外国人を対象とした在留資格です。

取得するためには、学歴、職歴、年収などの要件を満たしている必要があり、審査も厳しいため、取得の難易度は高くなっています。

まとめ

この記事では、宿泊業界における外国人労働者の必要性と、受け入れ可能な在留資格について解説しました。

外国人労働者の受け入れは、人手不足の解消だけでなく、外国人旅行者へのサービス向上、多様な文化や価値観を取り入れた職場環境の創出など、多くのメリットがあります。

それぞれの在留資格の要件を理解し、自社の経営状況やニーズに合った適切な制度を活用することで、人手不足の解消と更なる事業発展を目指しましょう。

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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