特定技能制度

この記事では、特定技能所属機関について解説をしています。在留資格「特定技能」によって外国人労働者を雇う場合、多くの要件、手続きがあります。特定技能所属機関になるための、要件・申請手続きを把握しておきましょう。

「特定技能所属機関」(受入れ機関)とは?


外国人労働者を雇用する企業の一種です。「受入れ機関」と呼ばれることが多いです。

中でも、在留資格「特定技能」によって日本に滞在する外国人労働者を雇用する企業のことを、
「特定技能所属機関」
と呼びます。

この記事では、基本的に受入れ機関と呼びながら解説していきます。

特定技能所属機関になるためには、まず企業が
特定産業分野14業種に該当している事業を行っている会社である必要があります。

・在留資格「特定技能」を持つ外国人が所属するため
・在留資格「特定技能」の業種は14種しかないため

この2つが理由です。
14種は特定技能分野と呼ばれており、

介護、ビルクリーニング業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

が全14種です。

特定技能所属機関は、外国人を雇用します。
それに伴い、雇用する外国人を適切に雇用し、関わっていくことが求められます。省令よって求められていることが複数あるので、今回はそれらを解説していきます。

特定技能所属機関(受入れ機関)になるためにクリアすべき基準

まずは、「受入れ機関になるための基準」を確認していきましょう。

1.以下のいずれかに該当すること

A. 過去2年以内で「中長期在留者(就労資格のみ。以下同じ)」を受入れ、管理を適正に行った実績があり、
かつ
・役員または職員から支援計画の実施責任者
・雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者
を、選任していること。(支援責任者と支援担当者は兼任可能。以下同じ)

B. Aの支援責任者および支援担当者は過去2年以内に
「中長期在留者」の生活相談業務に従事した経験がある役員、または職員
であること。

C. AおよびBの該当者と同程度に、支援業務を適正に実施できる者として出入国在留管理長官が認める者(在留資格認定証明書の交付申請の審査にて判断。)

2.外国人が十分に理解できる言語で支援を実施することができる体制が整っていること。

3.支援状況に必要な文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管しておくこと。

4.支援責任者および支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ欠格事由に該当しないこと。

5.5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと。

6.支援責任者、または支援担当者が、外国人、およびその監督をする立場にあるものと、
定期的な面談を実施できる態勢が整っていること。

7.分野ごとの特有の基準に適合すること

特定所属機関(受入れ機関)が満たすべき要件

「受入れ機関になるための基準」とは別に、「受入れ機関になった後の基準」があります。
それを見ていきましょう。

外国人との「雇用契約」に関して満たすべき基準

受入れ機関は、外国人労働者と「特定技能雇用契約」を結びます。この契約の基準を紹介します。
基準は、以下の7項目です。

1.業務内容

各分野で省令において定められた技能を要する業務に従事することが求められます。
「雇ったなら、なんでもさせていい」というわけではありません。

業務の基準は基本的に、「相当程度」であること。
この「相当程度」とされる知識・技能の基準は、在留資格「特定技能」を取得するための試験で、事前に確認されています。

特別な育成・訓練を受けなくても、試験をクリアした外国人労働者が、相当程度の知識・技能ですぐにできる業務であることが基準になっています。

以上の基準は、「特定技能1号」の基準です。

「特定技能2号」については、熟練した技能を要する業務に従事すべきであるとされています。
1号を経て熟練した技能を労働力にすることが前提であるからです。
しかし、「特定技能2号」に関しては、まだ法改正後の年数が短く、事例がないため
今後の運用方針、数年後の具体例をチェックしていく必要があります。

[各分野の省令はこちら→http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00201.html]

◯業務区分に変更が生じた場合は、「特定技能雇用契約に係る届出書」を用いて、変更後の業務区分について届け出ます。また、変更後の業務に対応できる知識・経験を外国人が持っていることを証明する資料を添付する必要があります。

◯分野を変更する場合は、在留資格変更許可申請を行う必要があります。

2.労働時間

外国人労働者の所定労働時間と、他の労働者(日本人など)の
所定労働時間が同等である必要があります。

外国人だけ少し長めに働くように設定することはできません。

◯「所定労働時間」とは、雇用契約や就業規則で定められた労働時間のことをいいます。(休憩時間は含みません。)
◯「他の労働者」とは、フルタイムで雇用されている労働者のことを意味しています。アルバイトやパートの方は含みません。
(フルタイム:原則、働く日数が週5日以上、年間217日以上、週所定労働時間が30時間以上、これら全てを満たす労働者のことです。)

フルタイムで働くことになるため、複数の企業が同一の労働者を雇用(いわゆる、「仕事の掛け持ち」)することはできません。

3.報酬


外国人労働者への報酬額は、他の労働者(日本人など)が受け取る報酬額と同等以上にする必要があります。

「最低賃金さえ超えていれば問題ない」という考えは認められません。
同じ仕事に従事している日本人従業員の報酬額と、最低賃金が大きく離れている場合、同等以上にまで調整する必要があります。

「外国人労働者を低賃金で雇っている」という内容のニュースを見ることがありますが、外国人であるという理由で報酬を低くすることは認められていません。
また、日本人の報酬を低くするという逆のパターンも認められていないので、
「同程度」にすることを意識してください。

4.差別は禁止

外国人であるからという理由で、報酬額、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用など、その他の待遇について、差別的な取り扱いをしてはいけません。
上記の報酬に関する項目と同じく、日本人と同程度の対応をしなければいけません。

5.有給休暇

受入れ機関で働く外国人が一時帰国を希望する場合には、それに必要な有給休暇を取得させなければいけません。
事業の運営を妨げる場合など、「業務上やむをえない事情」がない限り、外国人が有給休暇を取得することができるようにするための項目です。

なので、労働基準法上の年次有給休暇を全て使い切った外国人が一時帰国を希望する場合も、追加で有給休暇・無給休暇を取得することが認められます。

◯上記「業務上やむをえない事情」とは、

・外国人が担当する業務を、他の労働者が代替できない業務である
・休暇取得希望日に、当該外国人が従事しなければならない

これらについて、合理的な理由がある場合のことを意味します。

6.帰国時の旅費


特定技能による雇用契約終了後、外国人が帰国に必要な旅費を負担できない場合、雇用している受入れ機関が旅費を負担します。

同時に、雇用契約終了後に円滑な出国ができるように、必要なサポートをしなければいけません。

外国人労働者が一時帰国のために休暇を取ったことを理由に、受入れ機関が当該外国人を不利益な扱いをすると、本基準を満たしていないことになる場合があります。
業務上、どうしても休暇を許可できない場合は、代替日を提案するなどの配慮をするようにしましょう。

7.外国人の生活を把握

受入れ機関は、外国人の健康状態や生活の状況を把握するために必要な措置をする必要があります。

8.分野の基準

各分野定められている特有の基準に適している必要があります。

9.派遣に関して

労働者派遣の対象となる場合、派遣先や派遣期間が定められていないといけません。

ただし、在留資格「特定技能」において、派遣で雇用することができる分野は2つだけ。
「農業分野」「漁業分野」
のみです。
これ以外の分野は、派遣では雇用できないので、注意しましょう。

特定技能所属機関(受入れ機関)自体が満たすべき基準

「特定技能」によって受け入れる外国人労働者を保護するために、受入れ機関には一定の基準が設けられています。

1.法令遵守

労働、社会保険、租税に関する法令を守っていることが求められます。

法令関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令の3つです。

2.離職

1年以内に特定技能外国人と同じ業務に従事する労働者を非自発的(リストラ、倒産など)に離職させていないこと。
雇用している日本人労働者を非自発的に離職させて、その穴埋めとして外国人労働者を雇用することは、特定技能の制度の趣旨に沿っていないため、認められません。これを防ぐための基準です。

3.行方不明者

1年以内に受入れ機関の過失などで、行方不明者を発生させていないことが求められます。

具体的には、
雇用条件に沿った賃金を支払っていない、支援計画を実施していない、法令違反をしているなどの行為を受入れ機関が行っていた期間内に、外国人が行方不明になった場合が対象となります。

つまり、受入れ期間の不適切な行動によって、外国人が逃げ出した事実があってはいけないということです。

4.欠格事由

欠格事由(5年以内に出入国、労働法令違反)に該当していないことが求められます。

5.文書の保管

特定技能外国人の活動内容に関する文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管することが求められます。

6.保証金の徴収

外国人などが保証金の徴収などをされていることを、受入れ機関が知った上で雇用契約を結んでいないことが求められます。

7.違約金を定められない

受入れ機関が違約金を定める契約などを締結していないことが求められます。

8.費用

外国人の支援に要する費用を、外国人本人に負担させないこと(間接的な負担も認められない)が求められます。

9.派遣

労働者派遣の場合は、派遣元にて当該分野に関する業務を行っている者、適していると認められる者であるほか、派遣先が上記1〜4の基準を満たしていることが求められます。

10.労災保険

労災保険関係の成立の届け出などを適切に取り扱っていることが求められます。

11.継続的な雇用

雇用契約を継続して行っている体制が、適切に整備されていることが求められます。

12.報酬の支払い

報酬を預貯金口座への振り込みによって支払うことが求められます。

13.分野別の基準

各分野が持つ特有の基準に適合していることが求められます。

申請について

特定技能所属機関に関する手続きは、以下のようなものがあります。

1.特定技能の在留資格認定証明書

2.特定技能外国人の雇用契約に関する届出

3.1号特定技能外国人支援計画に関する届出

4.特定技能外国人の支援委託契約に関する届出

5.特定技能外国人の受入れ困難に係る届出

6.出入国または労働関係法令に関する不正行為などを知った時の届出

7.特定技能外国人の受入れ状況に関する届出

8.1号特定技能外国人支援計画の支援実施状況に関する届出

9.特定技能外国人の活動状況に関する届出

このうち「特定技能雇用契約に関する届出」は外国人労働者と雇用契約を結ぶ、一番初めの段階から必要です。雇用契約を結んでから14日以内に届出をする必要があります。

届出の際には、雇用条件などを資料にまとめ、明確な情報として提出しなければなりません。

3、8の提出は、受け入れ機関から委託を受けた「登録支援機関」が代行することができます。

【補足】登録支援機関

ここまで、受入れ機関(特定技能所属機関)について解説してきました。

特定技能外国人のサポートには、専門的な内容が多く含まれています。そのため、受入れ機関がすべての業務を把握し、実行することが難しい場合が多いです。

受入れ機関のこのような状況をサポートするのが登録支援機関です。
登録支援機関とは、受入れ機関から委託を受け、特定技能外国人の支援計画の作成・実施を行う機関です。

登録支援機関についての詳細は、以下のページからご確認ください。
特定技能の登録支援機関とは?登録申請の方法まで解説

まとめ

 

今回は、特定技能所属機関について解説しました。(文中では受入れ機関)
かなり、項目が多いですが、大まかに言えば、

・法令に関して、守るべき点
・特定技能外国人に対して、受入れ機関が負担する部分

この2つを守ることが求められます。
しっかり理解して、日本の労働力不足解消に向けて活用しましょう!

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執筆者
外国人労働者ドットコム編集部

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