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特定産業分野の「産業機械製造業」とは
産業機械製造業は、日本の製造業の根幹を担う分野の一つです。日本の社会インフラ整備や多くの産業へ生産材を供給しており、人々が生活していくにあたって不可欠な分野です。
しかし、産業機械製造業では、深刻な人手不足が問題となっています。この状況を乗り切るための手段のひとつとして、外国人労働者の受け入れが挙げられます。
産業機械製造業のこれからの発展のためには、産業機械製造業に関する基本的な知識・技能を有し、現場の状況に応じながら作業を遂行できる、いわゆる「即戦力」となる外国人労働者が求められます。
そこで今回は、4月の改正入管法から新たに加わった在留資格「特定技能」により産業機械製造業の分野で就労する外国人労働者に関して解説していきます。
雇用形態
直接雇用のみです。派遣での雇用は認められていません。
受入人数
5年間で、産業機械製造分野全体で5,250人の受入れが予定されています。
人材の基準
産業機械製造業分野において外国人労働者を在留資格「特定技能」で受け入れるには、その外国人が次の要件を満たしている必要があります。
・以下に定める試験に合格していること
・産業機械製造業分野の第2号技能実習を修了していること
なお、素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野の3分野に関しては、「製造分野特定技能1号評価試験」として共通の評価試験を実施します。製造現場で従事する業務の多くが共通しているため、技能水準と評価方法が統一されています。
技能水準と評価方法
外国人の技能水準は「製造分野特定技能1号評価試験」によって評価されます。
この試験は、産業機械製造業分野における業務について、監督者の指示をきちんと理解することができ、的確に、自らの判断により業務を遂行できる者であることを認定するものです。合格者は、一定の専門性・技能を用いて、当該分野での「即戦力」として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
-詳細-
試験言語:主に現地語を予定
実施主体:経済産業省が選定した民間事業者
実施方法:学科試験および実技試験
実施回数:年1回程度、国外実施(必要に応じて国内での実施)
日本国内で試験を実施する場合
1.退学・除籍処分となった留学生
2.失踪した技能実習生
3.在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
4.在留資格「技能実習」による実習中の者
以上の者については、その在留資格の性格上、当該試験の受験資格が認められません。
日本語能力水準と評価方法
以下の2つの試験に合格した人は、業務で必要とされる日本語能力を有する外国人労働者として評価されます。
1.「日本能力判定テスト」
「日本語能力判定テスト」は、特定技能として外国人を受け入れるために必要な日本語水準を判定するためのテストです。これに合格した外国人は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するもの」と認められ、基本的な日本語能力水準を持つ外国人労働者と評価されます。
-詳細-
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施
2.「日本語能力試験(N4以上)」
「日本語能力試験(N4以上)」に合格した人は、「基本的な日本語を理解することができる」と認定されます。生活に支障が出ない程度の会話ができるが外国人と認められ、「特定技能」として受け入れる外国人労働者に必要な日本語能力を有すると評価されます。
-詳細-
実施主体:独立行政法人国際交流基金および日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回から2回実施
「産業機械製造業」の現状
世界では工作機械やロボットなど、産業機械への需要が高まっています。しかし平成29年度の産業機械製造業に関連する業務の未充足求人数は直近3年分の平均値から1万2000人となっています。5年後には産業機械製造業の需要が、年2%程度拡大すると予想されています。そうなると、もちろん、その拡大に伴う労働力への需要拡大も考えられます。これによって生じる人手不足はなんと、7万5000人ほどと推計されています。
有効求人倍率(平成29年度)について、産業機械製造業分野に関連する職業分類では2.89倍。金属プレス工は2.97倍。金属溶接・溶断工は2.50倍。プラスチック製品製造工は3.70倍となっています。ここで紹介したすべての数値が2倍を超えていますね。かなり深刻な人手不足の状況がうかがえます。
また、産業機械製造分野は地域における雇用創出に貢献しています。しかし、地域ごとに人手不足の状況が異なることを留意しておく必要があります。
生産性向上や国内人材確保に向けた取組
日本国内の各企業は生産性向上に向けて、以下のような取り組みを実施しています。
・生産プロセスの見える化などの工場のデジタル化
・IoT・AI等の活用による生産プロセスの刷新により、在庫の適正化や納期の短縮
経済産業省としては、企業による設備投資やIT導入を支援する施策により、企業による生産性向上の取組を支援しています。産業機械製造業分野を含む製造業の生産性は、平成24年から平成28年までに年平均約2%(推定値)向上しています。
国内人材確保に向けた取組
日本国内の各企業は当該分野において、女性や高齢者の活躍する場面を増やそうとしています。具体的には、ITを活用した在宅勤務環境や柔軟な出勤時間などの制度整備により、短時間勤務の希望に応えていこうとしています。
経済産業省は
1.中小企業が女性、高齢者等多様な人材を活用する好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及
2.賃金を上げることに積極的な企業への税制支援
3.下請等中小企業の取引改善に向けた取組
これらの施策などを行い、企業による国内人材確保の取組を促進しています。
企業それぞれの行い、そして国のサポートにより、人材の確保を目指しています。
実際、産業機械製造業分野の就業者に占める女性および60歳以上の者の比率は、平成24年の約30%から、平成29年には約34%へ上昇しています(推計値)。
入管法改正による特定技能導入
2019年の改正の目的は、日本国内の人手不足を外国人の受け入れによって解消することです。日本は今日、進行な人手不足に陥っています。この人手不足を、外国人受入れ政策を見直し、拡大することによって解消しようということになりました。
では、見直す前の入管法のままではいけなかったのでしょうか?労働のために外国人を受け入れるには、不十分だったのでしょうか?
まず、外国人が日本に滞在するには在留資格が必要です。在留資格とは、「外国人が合法的に日本に滞在するために必要な資格」のことです。在留資格には全部で33種類あります。それぞれ、留学などの定められた活動内容、配偶者との関係があります。就労のために滞在している外国人にも在留資格があり、定められた活動内容、滞在期間があります。
今までは単純労働に従事可能な在留資格は、日本人の配偶者などの場合を除くと「技能実習」のみでした。在留資格「技能実習」を持つ外国人は特定の技能や知識を習得することを目的とし、日本で働くことができます。しかし滞在できる期間は最長で5年。5年の実習期間を終えると母国に帰らなくてはいけません。これでは日本の労働力を継続的に支えることはできません。
つまり、既存の単純労働への従事が可能な在留資格「技能実習」では、日本の深刻な人手不足を解消できないということです。
経済産業省の文書においては、「特定技能」による外国人受入れの趣旨・目的は以下のように述べられています。
「産業機械製造業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持する」
そこで新設されることになったのが「特定技能」。この「特定技能」は、「技能実習」の延長ととらえることのできる在留資格です。
-「特定技能」で就労な可能な14の業種
・漁業
・飲食料品製造業
・外食産業
・介護職
・農業
・宿泊業
・ビルのクリーニング業
・素形材産業
・産業機械製造
・航空業
・電気および電子機器関連産業
・自動車整備業
・建設業
・造船および船舶工業
これらにうちどれかに当てはまる業種であれば、働くことが可能です。
特定技能を活用するためのポイント
ここでは、外国人労働者を雇用する受入れ企業側が押さえておくべきポイントを紹介していきます。
業種
受入れ企業の業種は「産業機械製造業」に当たるものでなければいけません。「産業機械製造業」の範囲は以下の業種です。
○機械刃物製造業
○ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
○はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業および素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く), 生産用機械器具製造業(素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く)
○業務用機械器具製造業において管理、補助的経済活動を行う事業所
○事務用機械器具製造業
○サービス用・娯楽用機械器具製造業, 計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械器具・理化学機械器具製造業
○光学機械器具・レンズ製造業
待遇
受入れ企業は、待遇に関する3つの要件を満たす必要があります。
1.日本人と同等以上の給与
2.希望があった場合の休暇取得許可
3.雇用契約終了時の渡航費用の支払い(特定技能外国人本人が負担できない場合)
その他の要件
ほかには法令遵守、協議会への加入が求められます。
法令遵守の具体的な内容は、労働、社会保険、租税などの関係法令の遵守、労働者の非自発的離職や行方不明を発生させていないこと、支援体制の整備などです。
協議会に関しては、経済産業省が組織する「競技・連絡会」への加入が求められます。
まとめ
今回は、「産業機械製造業」の現状、受入れの詳細と必要性、人材の基準などを解説しました。
今後も産業機械製造業分野で必要となる労働力は増加するものと見込まれます。そして、今回紹介した要因による人手不足が早急に改善できる見通しは立っていません。
「産業機械製造業」はインフラなど、日本国民の生活を支えるために不可欠な分野にあたります。
外国人の受入れ拡大による今後の維持、そして発展に期待しましょう。
参考:経済産業省HP「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」
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- 執筆者
- 外国人労働者ドットコム編集部